東京の原美術館で「ヘンリー・ダーガー展」やってるよ!(ロバート・コペンハーゲン)2007.05.18 06:44
誰に発表するわけでもなく、『非現実の王国で』と題された物語の厖大な量の原稿とその挿絵としてのヴィジュアル作品を数多く残した孤独な天才芸術家、ヘンリー・ダーガー[1892-1973]
そんな彼の展覧会《ヘンリー ダーガー 少女たちの戦いの物語-夢の楽園》が、東京・品川にある原美術館で開催されています。


ヘンリー・ダーガーはしがない雑役夫として(僕からしてみれば)「決して幸せではない」どころか「どう考えても不幸」な人生を送った人物で、晩年彼の部屋からその作品群が発見されるまでは誰も彼が長大な物語を書き綴り、大量のヴィジュアル作品を制作していたことなど知らなかったという、実にミステリアスな男なんです。

現実の人生の代替として考え出されていたという説もあるダーガーの作品世界は相当ブッ飛んでいて、実際に彼の絵画を見てみますと、ポップな色使いとかわいらしい絵柄とは裏腹に、彼の中で始終渦巻いていたであろう激しい怒りやもどかしさがそこかしこに感じられ、そのあまりの生々しさに一瞬たじろいでしまいます。

ただ今回の展覧会は、どちらかというとそうしたネガティブな感情を思い起こさせる作品よりも、ダーガーの心の平静を感じ取らせるような作品が多いのが特徴です。
ダーガーは内臓をえぐられ血まみれで磔にされる子供たちの絵なども数多く描いているそうですが、今回の展覧会にはそうした過激な暴力描写のある作品は出品されていません。
僕としてはそうした作品こそ生で見てみたいという気持ちが強いんですが、今回の展覧会は今回の展覧会で、スッキリとした気分で美術館を後にできるような展示構成になっていますので、大人でも子供でもどなたでも安心して見に行けると思います。

といっても、ダーガーの描く少女には十中八九チンコがついていますし、その世界観が異様なものであることには何ら変わりがありません。
しかしながら、その異様さが全く不快でないのが不思議なところで、イカれたおっさんが孤独な状況下でオーディエンスをほとんど意識せずに作り続けた作品が、現代の日本でこれほどまでにポップさを持ち得ているという事実に、僕は驚きを隠しきれません。

とまあ、そんなわけで、ヘンリー・ダーガー展は7月16日(月)まで開催されています。
こんな拙い文章でダーガーの魅力が少しでも伝わったかどうか心配ですが、彼に興味を持たれた方はとりあえず『美術手帖』5月号でも立ち読みして(買って)、原美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか?