ライター:チンタ=ポンタ
あえて、誰でも知ってるようなことを紹介したい。でも、誰にも知られずに終わって しまう可哀想なものも紹介してあげたい。だから、目にとまったものを適当に紹介し ます。

第14回 変な光景を紹介します。


嫌なものを見た。
カラスがSをついばんでいた。
そこは線路の上で、私は駅のホームからそれを見ていた。
Sはきっと電車にはねられたのだろう。
見るも無惨なSの亡骸。
そのSの肉に貪りつくカラス。
熱々のおでんを無理やり食べさせられる上島。
目を覆いたくなるような光景だ。

嫌悪感を懐きながらも目を離せなかった。
カラスは常に警戒していた。
自分も轢かれてしまうかもしれない危険な場所だ。
自分のいる線路に電車が入って来ないかを気にしている。
熱湯に落ちてしまうかもしれない不安定な場所だ。
肥後がいつ背中を押してくるかを気にしている。
カラスは飛び立った。
列車が向かってきたからだ。
上島は飛び上がった。
湯船に突き落とされたからだ。
生死を賭けた戦いを目の当たりにした。

私は列車に乗り込んだ。
その後のSとカラスのことは分からない。
寺門もお湯に飛び込んだ。
何がしたいのか分からない。

グロテスクなSとカラスの嫌な目つきが頭を離れない。
とても印象的な空間だった。
気分が悪い。

そういえば、周りに誰もいなかった気がする。
もしかしたら、夢だったのかもしれない。
しかし、最近夢を見ない。
いつからか、夢を見られなくなった。

夢が現実の補完ならば、今、私の現実は完成されたものとなっているはずだ。
しかし、そうは思えない。
現実に100パーセント満足できているわけではない。
もし、これが完成された現実ならば、永遠に満たされない思いをしていくのか。
嫌だ。

夢の中なら何でもありだ。
何でもは言いすぎか。
だが、たいてい事をよく考えずに納得できてしまう世界ではある。

このできごとが夢であれ、そうでなかれ、フワフワとした感覚の中に自分がいる。
そして、夢のような世界と現実と本当の夢と夢であればいい世界とがはっきりしない私は、よく考えずにいろんな事を納得してしまっているようだ。
これはまずい。
思考停止というヤツか。
これではいけないので、とりあえずSが何だったのかを思い出そうと思う。

そう、Sは……。

以上。