ライター:ロバート・コペンハーゲン
毒にも薬にもならないけれど、読んでみるとなぜだか平常心が保てない、そんな詩とも小説ともコントとも区別がつかない「二度寝してもう少し見ていたい悪夢」のような文章を、毎週懲りずに連載していきます。
第28回 あずきちゃんと勇之助くんとぼくⅡ


かつて僕が『ホットドッグプレス』を毎号欠かさず購読していた頃のこと。
北方謙三先生は「試みの地平線」のある相談に対する返答として、こんなことをおっしゃっていた。

男は生涯で7人の女と付き合え!
7人の女と付き合えば、すべてのタイプの女を網羅できる!


「あ、そうですか、なるほどなるほど……」と、サッポロポテト(つぶつぶベジタブルの方)をボリボリ頬張りながら適当に読み飛ばしていたはずのその言葉を思い出したのは、僕が『あずきちゃん』を5話連続で鑑賞し、「さあ、6話目もいっちゃおう!」としていた、ちょうどその時のことだった。

7人なんて、軽い軽い!

当時中学3年生だった僕は、受験勉強もそこそこに、来るべき高校生活における輝かしい恋愛遍歴を、何の根拠もないまま夢想していた。
無論、夢は儚く消え去り、暗澹たる将来が待ち受けていたわけであるが、「高校に入れば(自動的に)彼女ができる」だなんて寝言を信じて疑わなかったのは、何も僕だけじゃないはずだ。
中学で女子とろくに会話もできなかったような、しょうもない男子はみんな、少なからずそうした拠りどころのない未来像を信じていたことであろう。
あるいは、女子だって、信じていたのかもしれない。

○○くんとはキスしても、全然気持ちが入ってかないんだよね~。
けど、××くんとはこないだ会った時に…………。


スターバックスの隣りの席で、同い年くらいの女が明け透けにしている個人的な性体験の話が気になって、僕は手元の小説の同じページの同じ行を、何度も何度も目で追ってしまう。
空になったキャラメルマキアートのストローに口をつけて気を紛らわすけれど、内心僕は「こえ~!女ってこえ~!」と奥歯をガタガタ言わせている。
もう追いつけない。
何周も遅れてしまって、僕はもう彼女たちにとても追いつけそうもない。

結婚するまでに、僕は何人の女性と付き合うんだろう?

最近「結婚」という単語が脳裏にチラつく。
「その前にもっと心配すべきことがあるんじゃねえの!?」と思うには思うけれど、「7人」という数字がどうしても僕の心に引っかかる。
7人はちょっと無理だと、今になって思う。
と言うより、7人の女性と付き合って「すべてのタイプの女を網羅」なんてしたくないのだ、僕はそもそも。
毎回全然違うタイプの女と付き合っている男が知り合いにいたら、それはそれで楽しいけど、正直なところ、ドン引きである。
けど、まあ、何万歩か譲って、全く別々のタイプの7人の女性と付き合うのだとしても、7人に至るまでのあと何人か、出会って付き合う分にはいいけれど(付き合うところまでいく自信がほんとは全くないけれど)、いちいち別れるのが辛すぎる。

今の記述に対し、「これだから最近の若い男は……」と罵られても然るべきだと思う。
しかし、僕には反論がある。
反論はあるが、このまま長すぎる前置きを書き続けると、せっかく描いた僕の『あずきちゃん』特製キャラクター相関図(イラスト付き)を披露するチャンスがなくなってしまう。
反論などしたところで、「キモい!」と一蹴されるだけなのも目に見えているし、同じ「キモい!」なら僕の『あずきちゃん』特製キャラクター相関図(イラスト付き)を読者のみなさんにぜひともご覧いただきたい。

そんなわけで、これが僕の描いた『あずきちゃん』特製キャラクター相関図(イラスト付き)だ!


じゃ~ん!
我ながら、ものすごくわかりやすい相関図に仕上がっていると思う。
これ以上わかりやすい『あずきちゃん』のキャラクター相関図はこの世に存在しない、と言い切ってしまってもいいくらいに素晴らしい仕上がりである。
読者のみなさんには、この画像をプリントアウトしてお使いのシステム手帳のメモのページに貼り付けていただきたい。
高見盛には、来場所の化粧まわしのデザインに、ぜひこの相関図を採用していただきたい。

ただ、あずきちゃんともちゃんかおるちゃんを囲むオレンジ色の線と、その横にちょいと添えられたKTKの3文字。
これには少々説明が必要である。


KTKとは「かたおもい友の会」の略称であり、「かたおもい友の会」は前述の3人が互いに協力し合って各々の恋を成就させるということを目的に結成された秘密組織の名称である。
要するに「お米は生きている」と同じような組織である。
「お米は生きている」とは異なり、KTKには「両思いになった者は直ちに会を辞めること」という厳しい規則が存在するが、互いのバックアップの甲斐もあり、それぞれの恋がうまく進展していく中で、次第にその存在自体が忘れ去られていくこととなった。
近頃『あずきちゃん』の作品世界に耽溺しっぱなしの僕としては、このKTKの自然消滅を喜ばしいと思う一方で、やはり寂しくも思っている。
しかし、KTK消滅後も元KTKメンバーの恋愛は、アニメ『あずきちゃん』の物語における軸をしっかりと形成し続けている。


さて、この3組のカップルについての考察は、なんと、次週に持ち越すことにする。
来週も懲りずに『あずきちゃん』で攻めていこうという魂胆である。
そして、「恋愛モノの少女漫画のおもしろさは、男性キャラクターの『人間臭さ』によって大きく左右される」という僕の持論について書くことも、まだ諦めてしまったわけではない。
最近のこの連載コラムの行き当たりばったり感は、危なっかしいことこの上ないが、それでも僕はまだまだ物足りないままだ。


男は生涯で7人の女と付き合え!
7人の女と付き合えば、すべてのタイプの女を網羅できる!



『あずきちゃん』を観ていると、やっぱりそんなの無意味な気がしてくるなぁ。
そういえば、この間本屋で見た『an・an』の見出し……


恋は「ひとり」とだけなんて誰が決めたの?


あーもう、うるせえっつの!!!


第28回 あずきちゃんと勇之助くんとぼくⅡ 終