
ライター:ロバート・コペンハーゲン
毒にも薬にもならないけれど、読んでみるとなぜだか平常心が保てない、そんな詩とも小説ともコントとも区別がつかない「二度寝してもう少し見ていたい悪夢」のような文章を、毎週懲りずに連載していきます。
第18回 オレとぼくの暴力的映画批評
「僕」という一人称を用いてコラムを執筆していると、自分のサディスティックな心の動きが自然と封じ込まれて、当たり障りのない文章ばかりが出来上がってしまう。
そのことに対して、俺はずっと不満を抱えてきた。
ただでさえ少ない友達が更に少なくなるんじゃないかとか、そんなどうでもいいこと(友達が多いとか少ないとか、そんなことは本当にどうだっていい!)を、「僕」という一人称を用いることを通し、いちいち気にして自分のサディスティックな部分を文章にぶつけられないのだとしたら、それは俺にとって本当に不幸なことだ。
そう判断してしまった以上、俺はもう「僕」なんていう一人称を使って文章を書いてなどいられない。
というわけで、今回に限り、俺は「俺」という一人称を用い、この連載コラムを執筆していくことにする。
俺を止められる者は、もう誰もいない。
止めようったって今さら遅いのだ。
俺はもう、書き始めてしまっているのだ。
というわけで(2度目)、俺は俺が最近観た映画(劇場でもレンタルでも)を片っ端から批評していくことにする。
キミの好きな映画を、俺はボロクソに言うかもしれない。
キミの嫌いな映画を、俺は手放しで褒め称えるかもしれない。
「ナニ様のつもりだ!」と、キミは俺のことをブン殴りたくなるかもしれないし、俺はそんなキミのことを殴り返して、「ケンカなら外でやっとくれよ!」と、行きつけの酒場を追い出されるかもしれない。
けど、それもいいじゃねえか。
“マイミク”のみんながそんな風にしてキミに挑戦状を叩きつけてきたことがあるか、ってんだ。
俺は『フラガール』もボロクソに言うよ。
俺はあいにくあの映画で感動できる感性なんて持ってないよ。
『フラガール』で感動したキミ、来週ちゃんと謝るから、今週のこのコラムをちゃんと最後まで読んでくれよ。
頼むよ。
俺からのお願いだよ。
俺はキミの“マイミク”じゃないかもしれないけど……。
ところで、俺はいつも1人で映画を観に行く。
1人で映画を観に行くってことの裏に、特に信念があるわけじゃない。
ただ俺は映画を観たい気分の時にふらりと劇場に立ち寄って映画を観たいってだけであって、要するに友達を誘って待ち合わせをしたりするのが面倒だからそうしているだけのことなのだが、もしも『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を友達か誰かと観に行ったとして、その友達が俺の横でボロボロ泣き始めた日なんかには、俺はその友達をスターバックスの店内で小一時間罵倒し続けるかもしれない。
いや、断っておくが、『東京タワー』は悪い映画じゃない。
真摯に原作と向き合って、真面目につくられた映画だと思う。
真面目すぎて面白味に欠けるっていう側面もあるにはあるが、142分もある邦画にしては長い上映時間も、眠くならずにちゃんと観ることができた。
それに、「『泣ける』の一言で会話のネタにされたんじゃ堪らねえっつーの!」と、感情的に煽るような演出が極力抑えられていたところなどは(もちろんそれも印象でしかないんだけど)非常に好感が持てたし、だからこそ、この映画でボロ泣きしている人を見かけると汚い言葉を浴びせかけてやりたくなるサディスティックな俺が登場するってわけだ。
それに、正直なことを言ってしまうと、「他人の母親が死んだって俺は泣かないよ」ってことで、活字というメディアでは著者の思いを自分の手元まで引き寄せることができたとしても(実際原作を読んで俺は何度もホロリとさせられた)、映像というメディアで個人的な母親への思い入れを吐露されても「知らねえよ!」の一言で突き放してしまえるっていうのが観ていてずっと不思議だった。
活字で伝わることと、映像で伝わること。
活字の中の人物は俺自身に置き換えられても、映像の中の人物はそうはできない。
俺は映像の中で「俺に似ている誰か」を探す。
母親への思いを持っていない奴なんて1人もいないだろうから、俺だってオダギリジョーに感情移入しちゃうけど、それは絶対に俺自身じゃないんだよね。
ただ俺はオダギリジョーに同情するだけ。
自分自身の問題ってところまで、それを引き寄せられはしないんだ(そのへんが監督の手腕ってことなのかな?)。
だから、泣けない。
泣いてる奴を信用できない。
泣いてる奴を見ると、俺の拳(未使用)が唸る。
まあ、『世界の中心で、愛をさけぶ』でオイオイ泣いた俺が言えたことじゃないんだけど、本当は。
それにしても、一人称を「俺」に変えて、どことなく腹の立つ文体にしただけで、どうしてこんなにも伸び伸びとコラムが書けるのだろうか。
冒頭でこのスタイルは「今回に限り」と書いたけれど、来週も引き続きこのスタイルでいってみることにしたい。
そうすることによって友達が減るかもしれないが、この世に生まれ落ちた時には誰しもが友達ゼロだったわけだし、マイナスからのスタートなんてありえないんだから、とにかくそのへんのことは気にせずに前向きにコラムを執筆していきたい。
来週はミシェル・ゴンドリーの新作『恋愛睡眠のすすめ』や、俺と同世代の新人監督が撮った『明日、君がいない』あたりを批評(って呼んじゃっていいのか、こんな文章?)していければと思う。
そして、先日レンタルで観たヴィム・ヴェンダースの『都会のアリス』も来週は絶賛する予定だ。
とまあ、こんな感じで今週のコラムも例によって大した結論もなくグダグダのまま終わりを告げる。
「来週も読んでくれ」とかそんな陳腐な締めくくりしか俺には思いつかないのが残念だが、もう本当にそれしか思いつかないので、俺はそうやって世にも陳腐な締めくくりでこのコラムを終えることにする。
来週も絶対読んでくれよな!!!
「僕」という一人称を用いてコラムを執筆していると、自分のサディスティックな心の動きが自然と封じ込まれて、当たり障りのない文章ばかりが出来上がってしまう。
そのことに対して、俺はずっと不満を抱えてきた。
ただでさえ少ない友達が更に少なくなるんじゃないかとか、そんなどうでもいいこと(友達が多いとか少ないとか、そんなことは本当にどうだっていい!)を、「僕」という一人称を用いることを通し、いちいち気にして自分のサディスティックな部分を文章にぶつけられないのだとしたら、それは俺にとって本当に不幸なことだ。
そう判断してしまった以上、俺はもう「僕」なんていう一人称を使って文章を書いてなどいられない。
というわけで、今回に限り、俺は「俺」という一人称を用い、この連載コラムを執筆していくことにする。
俺を止められる者は、もう誰もいない。
止めようったって今さら遅いのだ。
俺はもう、書き始めてしまっているのだ。
というわけで(2度目)、俺は俺が最近観た映画(劇場でもレンタルでも)を片っ端から批評していくことにする。
キミの好きな映画を、俺はボロクソに言うかもしれない。
キミの嫌いな映画を、俺は手放しで褒め称えるかもしれない。
「ナニ様のつもりだ!」と、キミは俺のことをブン殴りたくなるかもしれないし、俺はそんなキミのことを殴り返して、「ケンカなら外でやっとくれよ!」と、行きつけの酒場を追い出されるかもしれない。
けど、それもいいじゃねえか。
“マイミク”のみんながそんな風にしてキミに挑戦状を叩きつけてきたことがあるか、ってんだ。
俺は『フラガール』もボロクソに言うよ。
俺はあいにくあの映画で感動できる感性なんて持ってないよ。
『フラガール』で感動したキミ、来週ちゃんと謝るから、今週のこのコラムをちゃんと最後まで読んでくれよ。
頼むよ。
俺からのお願いだよ。
俺はキミの“マイミク”じゃないかもしれないけど……。
ところで、俺はいつも1人で映画を観に行く。
1人で映画を観に行くってことの裏に、特に信念があるわけじゃない。
ただ俺は映画を観たい気分の時にふらりと劇場に立ち寄って映画を観たいってだけであって、要するに友達を誘って待ち合わせをしたりするのが面倒だからそうしているだけのことなのだが、もしも『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』を友達か誰かと観に行ったとして、その友達が俺の横でボロボロ泣き始めた日なんかには、俺はその友達をスターバックスの店内で小一時間罵倒し続けるかもしれない。
いや、断っておくが、『東京タワー』は悪い映画じゃない。
真摯に原作と向き合って、真面目につくられた映画だと思う。
真面目すぎて面白味に欠けるっていう側面もあるにはあるが、142分もある邦画にしては長い上映時間も、眠くならずにちゃんと観ることができた。
それに、「『泣ける』の一言で会話のネタにされたんじゃ堪らねえっつーの!」と、感情的に煽るような演出が極力抑えられていたところなどは(もちろんそれも印象でしかないんだけど)非常に好感が持てたし、だからこそ、この映画でボロ泣きしている人を見かけると汚い言葉を浴びせかけてやりたくなるサディスティックな俺が登場するってわけだ。
それに、正直なことを言ってしまうと、「他人の母親が死んだって俺は泣かないよ」ってことで、活字というメディアでは著者の思いを自分の手元まで引き寄せることができたとしても(実際原作を読んで俺は何度もホロリとさせられた)、映像というメディアで個人的な母親への思い入れを吐露されても「知らねえよ!」の一言で突き放してしまえるっていうのが観ていてずっと不思議だった。
活字で伝わることと、映像で伝わること。
活字の中の人物は俺自身に置き換えられても、映像の中の人物はそうはできない。
俺は映像の中で「俺に似ている誰か」を探す。
母親への思いを持っていない奴なんて1人もいないだろうから、俺だってオダギリジョーに感情移入しちゃうけど、それは絶対に俺自身じゃないんだよね。
ただ俺はオダギリジョーに同情するだけ。
自分自身の問題ってところまで、それを引き寄せられはしないんだ(そのへんが監督の手腕ってことなのかな?)。
だから、泣けない。
泣いてる奴を信用できない。
泣いてる奴を見ると、俺の拳(未使用)が唸る。
まあ、『世界の中心で、愛をさけぶ』でオイオイ泣いた俺が言えたことじゃないんだけど、本当は。
それにしても、一人称を「俺」に変えて、どことなく腹の立つ文体にしただけで、どうしてこんなにも伸び伸びとコラムが書けるのだろうか。
冒頭でこのスタイルは「今回に限り」と書いたけれど、来週も引き続きこのスタイルでいってみることにしたい。
そうすることによって友達が減るかもしれないが、この世に生まれ落ちた時には誰しもが友達ゼロだったわけだし、マイナスからのスタートなんてありえないんだから、とにかくそのへんのことは気にせずに前向きにコラムを執筆していきたい。
来週はミシェル・ゴンドリーの新作『恋愛睡眠のすすめ』や、俺と同世代の新人監督が撮った『明日、君がいない』あたりを批評(って呼んじゃっていいのか、こんな文章?)していければと思う。
そして、先日レンタルで観たヴィム・ヴェンダースの『都会のアリス』も来週は絶賛する予定だ。
とまあ、こんな感じで今週のコラムも例によって大した結論もなくグダグダのまま終わりを告げる。
「来週も読んでくれ」とかそんな陳腐な締めくくりしか俺には思いつかないのが残念だが、もう本当にそれしか思いつかないので、俺はそうやって世にも陳腐な締めくくりでこのコラムを終えることにする。
来週も絶対読んでくれよな!!!
第18回 オレとぼくの暴力的映画批評 終
| 第43回 | ぼくは鼻セレブで尻を拭く | 2008.03.24 |
| 第42回 | 小林秀雄とぼく | 2008.02.11 |
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