
ライター:ロバート・コペンハーゲン
毒にも薬にもならないけれど、読んでみるとなぜだか平常心が保てない、そんな詩とも小説ともコントとも区別がつかない「二度寝してもう少し見ていたい悪夢」のような文章を、毎週懲りずに連載していきます。
第12回 ぼくのゲームボーイ
突然ですが、これが僕のゲームボーイです。
スケルトンにするかどうか、随分と迷った挙句にチョイスした緑色のボディ。
上の写真からもわかる通り、そこには生々しく、友達の家に遊びに行く際に自転車(マウンテンバイクもどき)の前カゴに直に入れて持ち運んでいたがために刻みつけられた無数の傷跡が残されており、ゲームボーイというハードウェアの頑丈さに対し、当時の僕がどれほど多大なる信頼を寄せていたかということがおわかりいただけるかと思います。
実際に、湾岸戦争の際に空爆によって完全に倒壊した家屋の中からゲームボーイが発見され、ボディは丸焦げになっていたにもかかわらず、電源を入れると問題なく作動したという逸話も、毎度お馴染みのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の中には記されており、その話の真偽のほどは定かではありませんが、ゲームボーイが類稀なる強度を誇るゲーム機であるということは結構有名な話みたいです。
しかし、当時の僕はそんなゲームボーイの頑丈さに少々甘えすぎていたのではないかと、最近ふと考えるようになりました。
もしもあの時、僕がスケルトンのゲームボーイをチョイスしていたら……。
これまで僕は、ゲームボーイ購入時の自分のチョイス(スケルトンorグリーン)が正しいものであったのかどうか、ずっと煩悶を繰り返してきました。
「緑色をチョイスした」というその事実が果たして正解であったのかどうか、僕はその答えをこの10年間ずっと探し続けてきたのです。
駅のポスターや電車の中の吊り広告に、その答えが隠されているのではないか。
クラスメイトの発する言葉の端々に、そのヒントが隠されているのではないか。
自宅で家族と過ごす時も、学校で友人と過ごす時も、はたまた喫茶店で恋人と過ごす時も、僕の心はずっとその疑問に囚われ続けていたのです。
心ここにあらず。
周囲の人はそんな僕の態度に業を煮やし、次々と僕のもとを去っていきました。
家族も友人も恋人も、気がつくともうそこにはいなくなっていました。
僕はいつもひとりでした。
そんな時に出会い、夢中になったのがタップダンスなわけですが……随分と話が逸れてしまいました。
要するに、僕が言いたかったのはこういうことです。
スケルトンだったら傷が目立つ。
緑色をチョイスし、傷が目立たないことをいいことに、頑丈さに甘え、乱暴にゲームボーイを扱ってしまったこと。
そのことを僕は反省するほかありません。
ゲームボーイ購入時の僕にとって「スケルトンにするか、それとも緑色にするか」というチョイスは、「木村カエラと長澤まさみ、2人から同時に告白されたらどっちをとるのか」という妄想とほとんど同様の切実さと意味を持っていました。
この場合「スケルトン=木村カエラ」、「緑色=長澤まさみ」と考えてみていただきたいのですが、正直に言ってスケルトンの方は僕の手に負えない感じがプンプンします。
周囲の人が持ち得ていないセンスを醸し出すスケルトンのゲームボーイは非常に魅力的であることに間違いはないのですが、ゲームをプレイしている間も内部の配線なんかが目について気が散ってしまいそうだし、自分の趣味とは関係なく、スケルトンのゲームボーイに合わせて洋服を買ってみたりもしなきゃいけないでしょうから、結構つらいものがあります。
当時の僕がどんな考えに基づいて緑色をチョイスしたのか、本当のところは忘れてしまいましたが、そんな刺激は多いけれど安心はできないであろうスケルトンに比べて、緑色のゲームボーイは「上手く付き合っていけるんじゃないか」と思わせるところが多かったというのが最終的なチョイスの理由ではなかったかと思います。
とにかく僕は、スケルトンではなく緑色をチョイスし、随分とその緑色のゲームボーイを傷つけてしまったわけで、その事実はどんなに僕が思い悩んだところで変わらないのです。
そしてその結果、僕の緑色のゲームボーイのスタートボタンは、爪を器用に使って奥の方まで押し込まなければ反応しなくなりました。
昔はそんなこと全然なかったのに……。
というわけで、僕はもうこの先一生背中に十字キー……いや、十字架を背負って生きていかなければならない身になってしまったわけです。
これから新しくニンテンドーDSを購入する機会もあるかもしれませんが、その時は同じ失敗を繰り返したりしません。
僕は今、ニンテンドーDSを専用ケースに入れて持ち運ぼうと考えています。
もう昔のように直に自転車の前カゴに入れて運んだりなんかしません。
専用ケースに入れ、リュックに大事にしまった上で、僕はニンテンドーDSを持ち運ぶのです。
僕はニンテンドーDSをそうやって丁寧に持ち運びます。
もう1度だけ書きます。
僕はニンテンドーDSを丁寧に持ち運ぶ。
それが僕なりの「償い」なのです。
ところで、僕のゲームボーイの端に控えめに貼られた、1枚のプリクラ。
拡大するとこんな感じです。
熱川バナナワニ園特製フレームの中におさまる幼き日の弟と僕の姿。
家族旅行で訪れた伊豆。
なにかに導かれるようにして足を踏み入れた熱川バナナワニ園。
そこで目にしたバナナ、ワニ、そして熱帯の草花。
正直あまり覚えてはいませんが、僕の満面の笑みから察するに、熱川バナナワニ園で過ごした時間は相当楽しいものだったようです。
政治経済。
パリテキサス。
井上陽水奥田民生。
そして、バナナワニ園。
バナナとワニって組み合わせ、なんかいいよね?
突然ですが、これが僕のゲームボーイです。
スケルトンにするかどうか、随分と迷った挙句にチョイスした緑色のボディ。
上の写真からもわかる通り、そこには生々しく、友達の家に遊びに行く際に自転車(マウンテンバイクもどき)の前カゴに直に入れて持ち運んでいたがために刻みつけられた無数の傷跡が残されており、ゲームボーイというハードウェアの頑丈さに対し、当時の僕がどれほど多大なる信頼を寄せていたかということがおわかりいただけるかと思います。
実際に、湾岸戦争の際に空爆によって完全に倒壊した家屋の中からゲームボーイが発見され、ボディは丸焦げになっていたにもかかわらず、電源を入れると問題なく作動したという逸話も、毎度お馴染みのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の中には記されており、その話の真偽のほどは定かではありませんが、ゲームボーイが類稀なる強度を誇るゲーム機であるということは結構有名な話みたいです。
しかし、当時の僕はそんなゲームボーイの頑丈さに少々甘えすぎていたのではないかと、最近ふと考えるようになりました。
もしもあの時、僕がスケルトンのゲームボーイをチョイスしていたら……。
これまで僕は、ゲームボーイ購入時の自分のチョイス(スケルトンorグリーン)が正しいものであったのかどうか、ずっと煩悶を繰り返してきました。
「緑色をチョイスした」というその事実が果たして正解であったのかどうか、僕はその答えをこの10年間ずっと探し続けてきたのです。
駅のポスターや電車の中の吊り広告に、その答えが隠されているのではないか。
クラスメイトの発する言葉の端々に、そのヒントが隠されているのではないか。
自宅で家族と過ごす時も、学校で友人と過ごす時も、はたまた喫茶店で恋人と過ごす時も、僕の心はずっとその疑問に囚われ続けていたのです。
心ここにあらず。
周囲の人はそんな僕の態度に業を煮やし、次々と僕のもとを去っていきました。
家族も友人も恋人も、気がつくともうそこにはいなくなっていました。
僕はいつもひとりでした。
そんな時に出会い、夢中になったのがタップダンスなわけですが……随分と話が逸れてしまいました。
要するに、僕が言いたかったのはこういうことです。
スケルトンだったら傷が目立つ。
緑色をチョイスし、傷が目立たないことをいいことに、頑丈さに甘え、乱暴にゲームボーイを扱ってしまったこと。
そのことを僕は反省するほかありません。
ゲームボーイ購入時の僕にとって「スケルトンにするか、それとも緑色にするか」というチョイスは、「木村カエラと長澤まさみ、2人から同時に告白されたらどっちをとるのか」という妄想とほとんど同様の切実さと意味を持っていました。
この場合「スケルトン=木村カエラ」、「緑色=長澤まさみ」と考えてみていただきたいのですが、正直に言ってスケルトンの方は僕の手に負えない感じがプンプンします。
周囲の人が持ち得ていないセンスを醸し出すスケルトンのゲームボーイは非常に魅力的であることに間違いはないのですが、ゲームをプレイしている間も内部の配線なんかが目について気が散ってしまいそうだし、自分の趣味とは関係なく、スケルトンのゲームボーイに合わせて洋服を買ってみたりもしなきゃいけないでしょうから、結構つらいものがあります。
当時の僕がどんな考えに基づいて緑色をチョイスしたのか、本当のところは忘れてしまいましたが、そんな刺激は多いけれど安心はできないであろうスケルトンに比べて、緑色のゲームボーイは「上手く付き合っていけるんじゃないか」と思わせるところが多かったというのが最終的なチョイスの理由ではなかったかと思います。
とにかく僕は、スケルトンではなく緑色をチョイスし、随分とその緑色のゲームボーイを傷つけてしまったわけで、その事実はどんなに僕が思い悩んだところで変わらないのです。
そしてその結果、僕の緑色のゲームボーイのスタートボタンは、爪を器用に使って奥の方まで押し込まなければ反応しなくなりました。
昔はそんなこと全然なかったのに……。
というわけで、僕はもうこの先一生背中に十字キー……いや、十字架を背負って生きていかなければならない身になってしまったわけです。
これから新しくニンテンドーDSを購入する機会もあるかもしれませんが、その時は同じ失敗を繰り返したりしません。
僕は今、ニンテンドーDSを専用ケースに入れて持ち運ぼうと考えています。
もう昔のように直に自転車の前カゴに入れて運んだりなんかしません。
専用ケースに入れ、リュックに大事にしまった上で、僕はニンテンドーDSを持ち運ぶのです。
僕はニンテンドーDSをそうやって丁寧に持ち運びます。
もう1度だけ書きます。
僕はニンテンドーDSを丁寧に持ち運ぶ。
それが僕なりの「償い」なのです。
【おまけ】
ところで、僕のゲームボーイの端に控えめに貼られた、1枚のプリクラ。
拡大するとこんな感じです。
熱川バナナワニ園特製フレームの中におさまる幼き日の弟と僕の姿。
家族旅行で訪れた伊豆。
なにかに導かれるようにして足を踏み入れた熱川バナナワニ園。
そこで目にしたバナナ、ワニ、そして熱帯の草花。
正直あまり覚えてはいませんが、僕の満面の笑みから察するに、熱川バナナワニ園で過ごした時間は相当楽しいものだったようです。
政治経済。
パリテキサス。
井上陽水奥田民生。
そして、バナナワニ園。
バナナとワニって組み合わせ、なんかいいよね?
第12回 ぼくのゲームボーイ 終
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