ライター:ロバート・コペンハーゲン
毒にも薬にもならないけれど、読んでみるとなぜだか平常心が保てない、そんな詩とも小説ともコントとも区別がつかない「二度寝してもう少し見ていたい悪夢」のような文章を、毎週懲りずに連載していきます。
第11回 ぼくのスペシャル文房具


シンガーソングライターの宇多田ヒカルさんが離婚されたそうです。
僕としては随分と前から(正確には結婚を発表したその時から)この日がいつかはやって来てしまうのだろうな……と心の準備をしていたつもりだったのですが、やはりショックを隠しきれないというのが正直なところです。
いや別に、宇多田さんが映画『CASSHERN』でお馴染みの写真・映像クリエーターの紀里谷和明さんと離婚したこと自体はそれほどショックではないのです。
なにがショックかって、そりゃ、「宇多田ヒカルがまだ24」だというその事実がショックで仕方ないのです。

このやんなるくらいの「人生の差」たるものときたら!

国内だけでも800万枚近く売り上げた1stアルバム『First Love』を発表したのは、彼女が17歳の時。
その後も順調にヒットを飛ばし続け、突然結婚を発表したのが19歳の時。
で、離婚が24歳。

ちなみに僕はこの間20歳になったばかりですが、当然今まで1度もミリオンヒットを飛ばしたことなどありません。
っていうか、そもそも僕は歌なんてつくれません。
結婚もしたことがありません。
っていうか、恋愛すら妖怪人間(ベム・ベラ・ベロ)が片手で指折り数えられるくらいしかしていません。
英語もしゃべれませんし、コロンビア大学を辞めたこともありません。
っていうか、入れません。
母は藤圭子ではありませんし、ニンテンドーDSのコマーシャル出演のオファーも1度も来ていません。
っていうか、なんのバイトもしていません[2007年3月6日現在]。

僕と宇多田さんの間に歴然と存在する「人間としての能力の差」と「人生の差」。
僕にできて宇多田さんにできないことなんてほとんどありません。
それとは逆に、宇多田さんにできて僕にできないことは山ほどあるのです。

完敗です。
初めから勝負になっていません。
もうこの隔たりは一生埋まりそうにありません。

……いや、待てよ。

あ、ありました、ありましたよ!
僕にできて宇多田さんにできないこと!
宇多田さんにできなくて僕にならできることが!

そう、それは「自分だけのオリジナル文房具をつくること」です!



***



というわけで、時事ネタを交えた前置きが少々長くなりましたが、まずはこちらの画像をご覧ください。


誰にも相談できない悩みを抱えた少年が橋の上から川面を見つめ、自分の行く末を悲観している様子を、研ぎ澄まされた感性によってリアルに描き出した、非常に秀逸なこちらの1コマ。

みなさん、見覚えはありませんか?

そうです、当サイトの超人気コーナー『或る天才漫画家の生涯』に掲載されている4コマ漫画作品の中のひとつ、「第9次こども宇宙大戦争『フラれて元気』」の2コマ目です。

実は今回僕は、ここに登場する少年の表情が妙に気に入ってしまったということもあり、その少年をフィーチャーして、こんなオリジナル文房具を考えてみたというわけなのです。


じゃーん!
特製ブックマークです!

普段はブックマークなんて、もともと買った本に挟んである紙かレシートで充分こと足りると考えている僕ですが、こうしてせっかくデザインしてしまったわけですから、1度は実際につくって使ってみたい……そう考えるのが人情ってもんでしょう。

そんなわけで、手作りの特製ブックマークを持参し、カフェで読書と洒落込んでみました。



***



ステップ1 本を途中まで読む


ふむふむ、この本はとても勉強になるなぁ。
生きているのが限界だと感じたらとにかく本を50冊読め、か……。
それじゃ、早速この本からカウントしてみよう!
まあ、それはそれとして、今日も随分と読書したなぁ。
よし、このへんで今日の読書はおしまいとするか!


ステップ2 特製ブックマークを挟む


今日はこの行まで読んだぞ!
明日もこの続きから読み進めていくことにしようっと!


ステップ3 本を閉じる



よっしゃ~!
明日も読むぞ読むぞ~!



***



いや~、手作りの特製ブックマークのおかげで全く新しい読書体験ができた気がします。

ところで、今回僕が読んでいた本は、講談社文庫から出ている北方謙三さんの『試みの地平線〈伝説復活編〉』。
冗談抜きで僕の大好きな本です。
第9回のコラムにも書いた『ホットドッグプレス』という雑誌に連載していた人生相談コーナーをまとめたものがこの本なのですが、これが実に痛快!
心が折れそうな時や最近たるんでるなと感じた時に、何度も読み返してしまいます。

それはそうと、実は今回用意したブックマーク、先程紹介した「矢印タイプ」だけではないのです。
もう1種類、つくっておいたものがあるのです。

それはどういったものかと言いますと……


なんか不憫です、これ。
それにこれ、どうやってバッグにしまえばいいのでしょう?
う~ん。
え~っと。
んん~。

いくら考えてみても、しまえません。
完全な失敗作です。

こうなってしまったら、もうほかに道はありません。
その場で読破あるのみです。
自分の失敗には自分で落とし前をつける。
それが「男の生き様」ってもんですから。

……なんて、そうこうしているうちに、宇多田ヒカルさんは僕をどんどん周回遅れにしていくのです。
せめて宇多田さんにも僕のつくった特製ブックマークを、プリントアウトして台紙に貼り付けてカッターで切り抜いて、使ってもらえたらうれしいのですが、それもきっと叶わぬ夢です。



あ~あ、こりゃもうどうしようもねえや!

とりあえずあと49冊、読書でもするか!



第11回 ぼくのスペシャル文房具 終