ライター:鈴木アキヒロ
中学時代。あの頃僕らは何を考えていたのだろう。頭の中の九割は性欲で残りの一割で遊んだり勉強したりしていたあの頃。そんな時代を少年Sと一緒に思い出してみませんか?
ちなみに少年Sは筆者とは何の関係もありません。マジです。いやほんとに。ほんと ですって。

第8話 プロジェクトS -その4-


「おはよう。鈴木くん。」
昭弘くんが驚きのあまり、ぼーっとしているので牧田さんは不思議そうにもう一度声をかけてきます。

「あ。あ。はい。おはようございます。」
昭弘くんはガチガチになりながら、挨拶を返します。

あまりしゃべったことのない牧田さん相手といえど、やはり女の子に面と向かって挨拶をされることはやはり昭弘くんにはかなり高度にこっぱずかしいことでしたので、昭弘くんは目さえ合わせることができませんでした。

「年賀状ありがとうね。」

牧田さんはにこっとして言いました。
昭弘くんは視線を合わせてないのでそれに気がつかなかったのですが。

「おお。うん。はい。いやいやどうも。」

昭弘くんテンパりながら返します。

「あのことだけどね。」
「あのことって?」
「うん。ほら、肩車してスパイクしたら反則かどうかってやつ。」
「あ!ああ、はい。」

そうだ、年賀状の中でそんなアホなこと聞いたなあ・・・
昭弘くんは激しい後悔の念にさいなまれました。

「先生に聞いてみたんだけどね。」

げ・・・。ほんとに?

「別に反則ではないと思うって。ただ、後衛が上に乗っかってる場合はよくないかもしれんって言ってたよ。でも、後衛の人が上だとしても、下の人の足元が真ん中のラインより後ろにいたんなら問題はないはずだとも思うのよね・・・。このへんは私も詳しくは分からなかったわ。ごめんね。」

牧田さんは申し訳なさそうに言いました。

「いや、全然申し訳なくなんかないから。いや、ほんと、くだらんこときいてこちらこそごめん!」

昭弘くんは必死で謝ります。

そりゃそうです。
適当に質問したことに対し、牧田さんは先生に聞きに行くというなんとも真面目な応対。

数学の授業中に先生に質問されても
「すみません。寝ていて聞いてませんでした。大変申し訳ないのですが、ここはとりあえず都築にきいといてください。」
をとりあえず連呼する昭弘くんや、
「えー俺、連立方程式が連立してる意味がそもそも分からないんすけど。」
と、意味不明なことを言って教師を落胆させるハラマサくんとは訳が違うわけです。

「うんうん、いいの。それより、肩車してスパイクなんて私考えたこともなかったよ。鈴木くんってそういう発想力すごいよね。」

牧田さんは言います。
いや、牧田さん。昭弘くんの発想力はすべてそのアホさに起因しているものなんですが・・・。

さすがの昭弘くんも牧田さんのその優しい発言はかなり照れくさかったらしく、顔を赤くし、モジモジしながら
「いやいやいや・・・。」
と連呼していました。

「世の中きもいもの多々あれど、あのときの俺はその中でも相当きもい部類の光景だっただろうね。」と昭弘くんは後年他人事のように述懐しています。

「うんうん。いいの。それだけだから。じゃあ、またね!」

牧田さんはそう言うと昭弘くんの机から離れ、いつもの女子の群れの中へ帰っていったのでした。

「うーん・・・。」

昭弘くんは自分の額に汗がにじんでいるのに気づきました。

そして、年賀状ありがとうと言われたときに、どうして「こちらこそありがとう。」と言えなかったのかということを激しく後悔したのでした。





次回へつづく・・・