ライター:鈴木アキヒロ
中学時代。あの頃僕らは何を考えていたのだろう。頭の中の九割は性欲で残りの一割で遊んだり勉強したりしていたあの頃。そんな時代を少年Sと一緒に思い出してみませんか?
ちなみに少年Sは筆者とは何の関係もありません。マジです。いやほんとに。ほんと ですって。

第6話 プロジェクトS -その2-


「何で牧田さんから・・・?」
昭弘くんはその年賀状を手に首をかしげました。

牧田さんとは、フルネームを牧田彩夏(まきたさいか)といい、昭弘くんと同じクラスにいる女の子でした。昭弘くんとは小学校も同じで、小学校4年か5年生のころに一度同じクラスになったことがありましたが、特に親しい間柄というわけでもなく、たまに一言二言のどうでもいい事務的な会話を交わすだけの関係でした。

ま、言うならば昭弘くんにとって牧田さんは、ただのクラスメートで、それ以上でもなければそれ以下でもない存在なのでした。

なのに。どういうわけか、そんな牧田さんから年賀状が昭弘くんのもとに来たわけですね。

昭弘くんが首をかしげるのももっともです。

とりあえず昭弘くんはやってきた年賀状をまとめて、そそくさと自分の部屋に戻りました。

「鈴木くんへ
明けましておめでとう!今年も楽しい年になるといいですね!陸上頑張って!」

何度読み返しても、牧田さんからの年賀状には、やはり女の子らしい字でこれだけしか書かれていません。

「なんなんだよ、いったい・・・。」

昭弘くんは困惑しました。

何せ昭弘くんは多くの中学生がそうであるように、普段からそんなに女の子に積極的に話しかけるようなタイプではありませんでした。別に話したくないわけではありませんでしたが、照れくさいし、何をしゃべっていいかもよく分からなかったのです。どちらかというと、男の友達と輪を作りいつもその中にいて楽しくやってるような、そんな少年でした。そう。別に女の子に興味が無いわけではないのだけれど・・・。むしろ大いにあるはずなのに・・・。この辺が男子中学生の心の構造の難しいところですね。

さて、そんなわけですから、昭弘くんは当然手紙のやりとりなど女の子としたことがあるわけがないのです。

せいぜい小学校の頃の女の担任の先生に
「もうすこし漢字と算数(特に少数の計算)の練習をしっかりとさせてください。」
と書かれた手紙を「これをお母さんに渡して。」と言われてもらったりしたくらいです。

しかし、いくら経験地が低いからといっても、年賀状が来てしまったからには、返事を返さないといけません。

小学校の頃担任の先生にもらった手紙のように、親の手に渡る前に破ってどぶに捨てる、といった対応ではいけないわけです。(注:その後昭弘くんは、手紙が渡ってないことが担任にばれて、こっぴどく怒られた挙句、連絡帳に長々と親へのメッセージを書かれたといいます。ほんとに、昭弘くんは小さい頃からダメなやつですよね。)

というわけで、昭弘くんは二時間くらい「うんうん」と唸りながら返事を書いたのでした。

「年賀状ありがとう!陸上は、まあ、適当に頑張るよ!牧田さんはバレー部だったっけ。まあ、適当に頑張って。勉強も二年生になると大変になるだろうから頑張りましょう。バレーといえば去年体育の授業中にハラマサと肩車をしてスパイクするのを練習してたんだけどそれは反則になるんでしょうか?是非こんど教えてください。今年も頑張ろう! 鈴木昭弘より」

これが昭弘くんのひねり出した返事でした。
まあ、何故か「頑張る」という動詞を四回も使っているんですけど、このあたりからも昭
弘くんのテンパり具合がよくお分かりいただけると思います。

大体、肩車をしながらスパイクを打つことが反則かそうでないかが今年一番のトピックに
するくらいに気になるのかお前は?と問いたいところです。牧田さんもこんなやつに是非
こんど教える価値なんて全くありません

普段昭弘くんの書く年賀状というのは非常にウイットに富んだもので友人たちからも好評
を博していたのですが、こと女の子が相手ではこのようにトホホなものになってしまうわ
けですね。(昭弘くんは後年、この手紙を「初期の駄作」と表現している)


そしてこの年賀状を昭弘くんはちょっとドキドキしながらポストに投函しました。


そして家に戻ってから、めったに学習に使用されない学習机の引き出しから一学期の春にクラス全員で撮った写真を引っ張り出しました。

牧田さんは中列の一番左に座り、昭弘くんは上列の右から四番目に立ってカメラを見つめているのでした。

「う~む。」

昭弘くんは写真を見ながらもう一度唸り声をあげたのでした。


その3へつづく・・・