ライター:鈴木アキヒロ
中学時代。あの頃僕らは何を考えていたのだろう。頭の中の九割は性欲で残りの一割で遊んだり勉強したりしていたあの頃。そんな時代を少年Sと一緒に思い出してみませんか?
ちなみに少年Sは筆者とは何の関係もありません。マジです。いやほんとに。ほんと ですって。

第4話 おみゃあら何やっとるだ -最終話-


「ちゃんと説明しなさい。」
駐在さんが大変厳しい口調で言いました。
もはやハラマサ劇場もへったくれもない状況です。
「はい・・・。」
二人は従うしかありませんでした。

普段は教師相手に横柄な態度をとったりしている二人ですが、さすがにここではまずいということは本能的に察知していました。
そして、あとはどう頑張って親や学校への連絡を防ぐか、ということが焦点になっていることも本能的に分かっていました。こういうことにはすぐに頭が回るのに、どうして8枚の硬貨を「さっき拾った」などと持っていったのでしょう。

そして二人はことの一部始終をしゃべりました。
ハラマサくんが500円を拾い、そしてそのお金で昭弘くんと二人で一本120円のコーンポタージュスープの缶を2本、計240円分購入したこと。そして残りの260円を駐在所に届けたこと。
文章にすればただこれだけのことなのですが、これが今、二人を窮地に追い込んでいるのです。

「う~ん、なるほどね。」
駐在さんは調書をとりながら、依然厳しい顔で言いました。
「君たちのしたことは、一応ね、遺失物等横領罪っていう罪になるんだわ。」

た・逮捕・・・

このときの二人の顔面蒼白っぷりたるや、人の顔ってこんなに白くなるの?っていうくらいのものでした。逮捕といえばもう親に連絡されるどころの話ではありません。

「その場合、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料ってことになっとるんだわ。法律では。」
駐在さんは二人の顔をまじまじと見ながら言います。

懲役・・・罰金・・・
なんとも

「こ・これは自首にはならんのですか・・・?」
ハラマサくんが聞きます。自首なら少しでも刑が軽くなるとでも考えたのでしょう。

「あー、ならん。」
駐在さんはあっさりこう言いました。

「しかしね、まあ、今回の場合ね、額が額だし、君らも一応260円は善意から届けてくれたわけだしね。多少の考慮の必要はあると思うんだわ。君らはまだ12歳なわけだしね。逮捕や罰金はない。」
何と駐在さんはこう言ったのです!
二人の顔色が少し戻りかけます。
「ほ・ほんとですか?」
昭弘くんが言います。
「ああ。ただし、君らのやったことは立派な犯罪であり、今後二度とやってはならんことだ。」
駐在さん・・・。これが見せ場と言わんばかりに怖い顔で二人を見ます。
「はい。それはもう。重々承知しております・・・。」
二人もこれが見せ場と言わんばかりに必死で頭を下げます。

「ふむ。では反省しとるようだし、ここでは始末書で勘弁しておくからな。」

始末書・・・、でも逮捕や罰金に比べたらずっとマシです。
「ありがとうございます!!」
二人は必死で頭を下げました。

そして、二人は生まれて初めて、始末書というものを書かされました。

「これにも記入をしておきなさい。」
始末書を書き終わったところで、駐在さんがもう一枚紙を出しました。
「これは・・・?」
「拾得物の届けだ。この後半年落とし主が現れなかった場合、君らの届けた260円は君らのものになるようにしといてやる。大サービスだ。」
駐在さん!!何といい人なんでしょう!!

二人には駐在さんが神に見えました。

さて、記入が済み、二人は晴れてシャバにもどることができるはずでした。しかし次の瞬間駐在さんはこう言ったのです。


「じゃあ、一応、今から親御さんと学校に連絡だけ入れようかね。」


二人には駐在さんが悪魔に見えました。



そして、30分後、駐在所にはハラマサくんの担任である生活指導の上田先生、昭弘くんの担任である中川先生、そしてハラマサくんの母、昭弘くんの母の計四人が大集合してきたのでした。

そして、駐在さんからことの説明を受けた四人の大人たちはもぐらたたきのごとく駐在さんに頭を下げまくりました。もちろん二人もここが見せ場だと言わんばかりに頭を下げまくり、反省の言葉を連呼しました。

そして、駐在所から釈放された後、二人は今度は上田先生に説教をくらいました。

「おみゃあら、ほんとに、何をやっとるだ!」
上田先生は二人にこう言いました。


ほんと、俺たち、何をしているんだろう・・・。
それは二人にも、いや、誰にも分かりませんでした。


おしまい