ライター:鈴木アキヒロ
中学時代。あの頃僕らは何を考えていたのだろう。頭の中の九割は性欲で残りの一割で遊んだり勉強したりしていたあの頃。そんな時代を少年Sと一緒に思い出してみませんか?
ちなみに少年Sは筆者とは何の関係もありません。マジです。いやほんとに。ほんと ですって。

第3話  おみゃあら何やっとるだ -その3-

 

あけましておめでとうございます。
2007年も我らが「お米は生きている」ならびに「少年S」の応援よろしくお願いします。

さて、少年Sは一応続き物ですので、一話目二話目をお読みでない方はそちらをお読みになってから今週の話を読んでいただけると大変都合がよろしいです。


「え・・・?」
駐在さんの思わぬツッコミに二人は絶句しました。

そのとおりです。今、昭弘くんとハラマサくんが机に置いたのは計八枚もの硬貨です。
みなさん、八枚の硬貨を一度に拾ったことありますか?
ないですよね?そう。これは大変ありえない出来事なんです。

「え、でなくて、こんなようけ小銭が一箇所に落ちとったんか、ってきいとるんだが。」
言葉を失った二人に駐在さんがたたみかけます。
一度に8枚の硬貨を拾うことなどありえません。しかし正直に言えば二人の着服はばれてしまいます。これは立派な犯罪です。


こういう状況を絶体絶命といいます。


「そ、それは、まあ・・・。」
ハラマサくんが声を絞り出します。
「まあ?」
「まあ、・・・・・・・あれです。」

ハラマサくん思考回路がショートしました。

「あれって言われてもなあ。あれってなんだあ?」
駐在さんがききます。
しかしハラマサくんの頭はもうやけくそです。
「あれとは・・・いや、落ちてたんです。そう。落ちてたんです。8枚。列をなして。」
「列をなして!?」
思わぬ答えに駐在さんも驚きます。
ハラマサくんの隣で昭弘くんは天を仰ぎました。
そう。思い出してください。ハラマサくんは教師に眉毛が薄くなったことを指摘され、それに対し「ストレスで抜け落ちた。」などという男です。そう。ハラマサくんは追い込まれると、無茶苦茶な言い訳をはじめ、泥沼に沈んでいき、最終的には溺死するタイプの人間なのでした。
そしてこの最悪の状況において、これからハラマサ劇場が始まるのは昭弘くんにとては疑いようのないことだったのです。
「まあ、座りなさい。」
駐在さんも思わず言います。促され駐在所の奥にあったパイプ椅子に腰をかけます。
「名前は?」
駐在さんがきいてきます。

これってあれですか。いわゆるとり調べっていう状態ですか?

昭弘くんの頭にはそんなことがよぎりましたが、おそらくこれはこの段階では「事情聴取」という状態でしょう。これがとり調べになるかならないかは、これからのハラマサ劇場にかかっているわけです。

こういう状況をお先真っ暗と言います。

一通り名前などを確認されたのち、駐在さんは本題に入りました。
「で、列をなして落ちとったいうのはどういうことだね?」
事情聴取開始です。
「いや、僕らも実際びっくりしたんですけどね。こう、落ちてるんですよね、列をなして。」
「どこにそんなふうに落ちとった?」
「あそこです。ゲオの駐輪場にです。」
「ふむ。で、列をなしてっていうのは?」
「いやあ、なんつーか、こう、僕らを店内に誘導するかのように、点々と、こう一直線上 
に8枚が並んでいたんですよ。」
昭弘くんの顔色が悪くなってきました。
「ふむ。一直線上に8枚・・・と。」
駐在さん。ハラマサくんの嘘をしっかりメモしてます。ああ。神よ!
「それはあれかね、どのくらいの間隔で落ちとったんだね。」
駐在さん、もう目が完全に「嘘だろ」と言ってます。
「2メートルですね。大体。」
「お前さん、2メートルつったら八枚もあったら長さ14メートルになるだろうが。あそこの駐輪場入り口のすぐ脇だろう。どうしたらそんな長さになるだ?」
駐在さん・・・冴えすぎ・・・。
「いや、2メートルじゃなかったかもしんないっす。いや、もはやよく覚えてないっす。」

ハラマサくん自滅。

「う~ん?そっちの君は何か覚えてないのかね?」
駐在さんは昭弘くんに矛先を向けました。昭弘くん困り果てます。
「いや・・・、俺はなんにも。ゲオの駐輪場に一緒に入ったら、こいつがいきなり「あ!」とか言って声を出したんで、見たらもう金持ってたんで、列をなして、とか間隔とかはもう、なんにも・・・。」
「ふむ。ということは、駐輪場に入ったら、こう、いきなりこっちの宮原くん(注:ハラマサくんの本名)が「あ!」と言ってお金を拾い上げたので、こちらの鈴木くんはその金がどういう状況で落ちていたのかは全くわからない。ということでいいんだな?」
「はい。」
「お金を拾うとこはみたわけね?」
「はい。」
昭弘くんは返事しました。
「ということを踏まえると、宮原くん。君は

「あ!」と言った直後に2m間隔の硬貨を8枚同時に拾い上げた

ということになるんだけれども、それって可能なことなのかね?」

駐在さんのとどめが二人のみぞおちに炸裂しました。

「いや、あの、無理です。はい。」
ハラマサくんが言いました。
そんなことができるのはダルシムくらいなもんです。
「でも状況を聞く限りそういうことではないのかね?」
「は、まあ、そうなんですが。」


気まずい沈黙が駐在所に立ち込めます。




「八枚落ちとったなんて嘘だろ?」
駐在さんが言いました。
この場合の「嘘」は名古屋弁ですので「そ」にアクセントがあります。





「はい。」

二人はがっくりと頭をさげました。




その4へつづく・・・