ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。
東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています
第42回 ウィルキンソンジンジャエール

カナダドライとはワケが違うとウワサの、「ウィルキンソンジンジャエール」を飲んでみた。

いつだったか、チェックしていたウェブサイトで僕はこのウィルキンソンジンジャエールの存在を知った。大多数の人は、ジンジャーエールといえばコカコーラの自販機でもおなじみのカナダドライのものを思い浮かべると思う。僕もそれしか飲んだことはなかった。あれ以外のメーカーがジンジャーエールを出しているなんてさっぱり知らなかった。コンビニなどではカナダドライしか扱っていないせいだ。
なので「ウィルキンソンのジンジャーはガチ」的なことをネットで知っても、マクドナルドやドリンクバーで飲むのはカナダドライばかりで、なかなかウィルキンソンの現物と出会う機会は巡ってこなかった。

しかし、出会いというのは急に訪れるものだ。今日の学校帰りにふらりと寄った自宅近くの酒屋の一角、コーラだかなんだかの炭酸飲料の隣に、ナチュラルにウィルキンソンは置いてあったのだ。
僕は居ても立ってもいられず、ウィルキンソンのビンを二本掴んで買い物カゴに入れた。ついでにビールも一本買った。カクテル(シャンディーガフっていうんだっけ?)にして飲むためだ。

酒屋さんを出る時に、店長のおやじさんから「そのジンジャーエールおいしいよ。(カナダドライとは)全然違うから」と言われた。嫌が応にも胸が高鳴る。心憎いセリフである、なんていいおやじだ。自転車を走らせて僕は猛スピードで帰宅し、一息つくのも束の間に、昨晩大量にこしらえた焼きそばの残りをチンしてかきこんだ。

シャワーも浴びた。あとは冷蔵庫に入れたウィルキンソンが冷えるのを待つばかりだ。唯一の趣味のインターネットで時間を潰しながら、ときおり冷蔵庫を開けてビンに触れ、冷え具合を確かめる。2時間ほど経っただろうか。いよいよキンキンに冷えてきた。
時は満ちた。
その存在を知ってから数年の時を経て、予想だにしなかったタイミングで実現したウィルキンソンとの出会い。妙な感慨をおぼえながら、僕は栓抜きを手に取った。僕の前になかなか姿を現そうとしなかったウィルキンソンだが、しかしその王冠はほとんど手応えを残さないままに外れ、ジンジャーの香りが僕の鼻孔をツンと刺激した。

生姜の香りは、まさしく香り立つといった風に骨太だった。これは香料でとってつけた香りとはまったく異なる、本物の生姜のそれに違いない。
まずは一口、口に含んでみる。
―――――――――――うまいっ!
舌先にピリピリとくる、キツめのジンジャーの風味。少し時間を置いてやってくる控えめな甘み。のどごしは「ヒリヒリする」とまで言ってしまってもいいかもしれない。そう、このジンジャーエールは辛いのである。甘さは本当に最小限だ。

だが不快な辛さではない。一口目を飲み干して少々のインターバルを置くと、ノドが舌先がジンジャーの風味とあの辛さを求めるのだ。…いつのまにかビンの残り半分のところにまで来てしまった!プレーンな状態で飲み干したいという欲求をこらえて僕は、残ったウィルキンソンを全てグラスに注ぐ。そして一緒に買っておいたビールを開けて、グラスがいっぱいになるまでなみなみとついだ。シャンディーガフの出来上がりである、このために発泡酒でなく奮発してビールにしたのだ。

泡を少し口に含んだだけで、ウィルキンソンの香りが舌先に感じられる。もう悠長なことは言っていられない。ここぞとばかりにノドを慣らして、グラスの中の混合物を体内に注ぎこんでいく。
これは、ほんとに、ものすごく、おいしい。カナダドライで作った偽物のシャンディーガフは、クソみたいに安い居酒屋で飲んだことがあったのだが。これは、ひと味やふた味どころじゃなく違う。咽頭を通過したあとの満足感がまったく違う。甘ったるい砂糖でなく、ドライな生姜の味わい。あっという間に僕は、つまみもなしに全て飲みきってしまった。何とも言えない多幸感と虚脱に支配される。嗚呼、素晴らしい。

今日学校で誰とも一言も会話しなかったという、客観的に見てもそうとうに寂しい社会生活でさえ、もはやどうでも良くなってしまった。毎日飲んでたら家計を圧迫しそうなので、たまの楽しみにこれからはウィルキンソンでカクテルを作ろう。モスコミュールもいいかもしれないけど、僕はやっぱりビアカクテルが好きだ。