
ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています
第35回 いまどきのTOKYO台湾のエロ小説
この夏台湾に行ったという友人のNさんに、こんなお土産をもらった。
本である。表紙には何ともいいがたく妖しい彩色の、女性の肖像。「我吻茶香」と題してあり、作者は桃 喜という人のようである。表紙のキャプションには「淡雅」「馨香」「風裡」「芳」と、さわやかに香り立つような文字が踊る。それが表紙絵の独特の雰囲気と相まって、何となくいかがわしい印象を見る者に与えている。
そう、この本はどうやらエロ小説らしいのである。
そういえばぼくは官能小説のたぐいをほとんど読んだことがなかったような気がするが、なぜかここにきて唐突に、台湾みやげで台湾のエロ小説を貰ってしまった。夏休み、実家にひきこもっていてとくに予定などは何もないので、暇つぶしにこいつを読んでみることにでもしようかな。
といっても、中国語など全くわからない。第二外国語で中国語を選択していれば少しは読めたのかもわからないけど。残念ながらぼくが選んだのはフランス語なので、中国語など大学受験の漢文でしか触れたことがないし、その時勉強したことは全て忘れてしまった。
なのでこの「我吻茶香」を読むに際しては、字面の雰囲気だけを読む&そうとう大雑把な飛ばし読み というスタンスで行くしかない。内容なんて読もうとせずにエロエロな語句を発見することのみに尽力し、お目当てのエロシーンを探し当てよう!ということ。読書の仕方としては邪道もいいとこだが、エロ小説なんで別に構わないだろう。
ページをぱらぱらとめくっていくと、この「我吻茶香」は章立てになっているらしい。なんと全十章にもなり、ページ数は全部で205。その重厚さに一瞬気が遠くなったが、205ページにわたって濃密なエロエロ世界が繰り広げられているかと思うと、むしろワクワクが止まらない。
…さて、そんな風に勇んで第1章から読み始めてみたけれど。
漢字だからなんとなくの意味くらいはわかるんじゃないか、という希望的観測を見事に打ち砕くわからなさである。まともに読もうとしたって、絶対にムリだ。
とりあえず登場人物の名前に○をつけてみるも、内容読解の手がかりにはほとんどなりそうになかった。どうやらこの藤崎剛という男性に、堤綾香という女性が主な登場人物であるようなのだが。なぜか両方とも日本人の名前なのが気にかかる。もちろん他の登場人物も全員日本人であるようだ。
舞台も京都なのだろうか?台湾の小説なのに登場人物も舞台も日本だなんて、妙だなあ。
京都有名的私校って、京都の有名私立大学ってことだろうか?同志社とか立命館が頭に浮かぶ。
ところで、この藤崎という人物は先生という敬称を伴うことがままある。ってことはこの藤崎剛、大学の先生か何かだろうか。
ならば堤綾香は女子大生で、これはエロ小説なのだから二人の間には教師と教え子の禁じられた恋愛関係がっ…!!っていうことになってくるのか。あるいは、学術研究に打ち込むあまり女性関係に恵まれずにきてしまった藤崎に、単位が欲しいだけの女子生徒、綾香が関係を持ちかけて…みたいな、現実世界でもありそうだけどやっぱりないっていうストーリーが展開されるのか。
いずれにしても、登場人物はだいたい理解できた。内容をこれ以上理解しようとしても無理なので、当初の予定通りに淫語探しに移ることにする。藤崎と綾香の濃厚な濡れ場にさえたどり着ければしめたものである。
…と、以上のように進めてきて、この次もトントンといけばよかったのですが。
この極めて横着な試みは結局のところ、まったくの失敗に終わってしまった。
あきらかにそれとわかるような淫語が、一切出てこなかったのである。
日本語の官能小説は読んだことはないけれど、その類の小説に出てくる性描写は普通の小説のそれをより下品に、そして大袈裟にしたものを想像して間違いないと思う。だからきっと回りくどい比喩や隠喩が多いにちがいないが、それは日本語表現の一つの特色であるからだということもたぶん間違いなく、中国語で描かれたエロ小説はきっとそれよりはシンプルな表現になるのではないか。だって文字が漢字だけだから。
つまりぼくは、モロに「陰茎」とか「女陰」とかが文中に頻出するにちがいないと思っていたのだ。
しかし「我吻茶香」にはその類のわかりやすい単語はまったく出てこなかった!
一目でわかるエロエロな語句を探して、一心不乱にページをめくり続けていたのに…!
少ないどころか、ひとっつも出てきやしない!!!
唯一、お色気を感じた語句がこれである。綾香脱下繋複的和服。綾香は、よくわからんが服を、とにかく脱いだ、と。その数行後に
誘惑 とある。うーん、ちょと微妙だが、この後にお楽しみが待っているのだろうか…。
しかし、そんな淡い期待は見事に裏切られることとなった。次のページでその章は終わっていたし、エロい言葉も出てこなかった。
全編を通して、ぼくが探していたような単語は一切登場しなかった。
これなんか惜しい。「勃」の文字にちょっとハッとしたけど、「起」がなかった。
これなんか、「書」じゃなくて「所」だったらなァ…。
●●●
このように、ぼくのワクワクドキドキは完璧に裏切られたのであった。
理由はいくつか考えられるが、やはり最も可能性が高いのは、
「そもそもこれはエロ小説ではなかった」
というものだろう。ぼくにこれをくれた友人が、表紙のいかがわしさ等から勘違いしてしまったのではないか。
確かに表紙絵の雰囲気はいかがわしい。作者名の桃喜ってのもあやしい。ピンクな感じがする。
背表紙にある「珍愛小説」という文句の「珍愛」というのも、なんかエロっぽい。これらを見て、Nさんはこの本をエロ小説だと判断して、いわゆる「ジャケ買い」をしてしまったのではないのだろうか。
もしぼくの推測が当たっていて、これがエロ本ではない普通の恋愛小説だったとしても。お土産を貰えてうれしいことには変わりないし、わからない中国語の小説をなんとか読みとくという貴重な経験をすることができてハッピーである。今日のぼくは非常にインターナショナルな人間であったといえる。部屋に引きこもりながらにして、国際理解を深めることができました!!
やってたことは淫語さがしだけど。
ちなみにこの「我吻茶香」最終章の最後の一文は、鳥が巣に帰ってくるように、愛も京都の地に還ってくるというものであるようです。ハッピーエンドで、よかったね。
この夏台湾に行ったという友人のNさんに、こんなお土産をもらった。
本である。表紙には何ともいいがたく妖しい彩色の、女性の肖像。「我吻茶香」と題してあり、作者は桃 喜という人のようである。表紙のキャプションには「淡雅」「馨香」「風裡」「芳」と、さわやかに香り立つような文字が踊る。それが表紙絵の独特の雰囲気と相まって、何となくいかがわしい印象を見る者に与えている。
そう、この本はどうやらエロ小説らしいのである。
そういえばぼくは官能小説のたぐいをほとんど読んだことがなかったような気がするが、なぜかここにきて唐突に、台湾みやげで台湾のエロ小説を貰ってしまった。夏休み、実家にひきこもっていてとくに予定などは何もないので、暇つぶしにこいつを読んでみることにでもしようかな。
といっても、中国語など全くわからない。第二外国語で中国語を選択していれば少しは読めたのかもわからないけど。残念ながらぼくが選んだのはフランス語なので、中国語など大学受験の漢文でしか触れたことがないし、その時勉強したことは全て忘れてしまった。
なのでこの「我吻茶香」を読むに際しては、字面の雰囲気だけを読む&そうとう大雑把な飛ばし読み というスタンスで行くしかない。内容なんて読もうとせずにエロエロな語句を発見することのみに尽力し、お目当てのエロシーンを探し当てよう!ということ。読書の仕方としては邪道もいいとこだが、エロ小説なんで別に構わないだろう。
ページをぱらぱらとめくっていくと、この「我吻茶香」は章立てになっているらしい。なんと全十章にもなり、ページ数は全部で205。その重厚さに一瞬気が遠くなったが、205ページにわたって濃密なエロエロ世界が繰り広げられているかと思うと、むしろワクワクが止まらない。
…さて、そんな風に勇んで第1章から読み始めてみたけれど。
漢字だからなんとなくの意味くらいはわかるんじゃないか、という希望的観測を見事に打ち砕くわからなさである。まともに読もうとしたって、絶対にムリだ。
とりあえず登場人物の名前に○をつけてみるも、内容読解の手がかりにはほとんどなりそうになかった。どうやらこの藤崎剛という男性に、堤綾香という女性が主な登場人物であるようなのだが。なぜか両方とも日本人の名前なのが気にかかる。もちろん他の登場人物も全員日本人であるようだ。
舞台も京都なのだろうか?台湾の小説なのに登場人物も舞台も日本だなんて、妙だなあ。
京都有名的私校って、京都の有名私立大学ってことだろうか?同志社とか立命館が頭に浮かぶ。
ところで、この藤崎という人物は先生という敬称を伴うことがままある。ってことはこの藤崎剛、大学の先生か何かだろうか。
ならば堤綾香は女子大生で、これはエロ小説なのだから二人の間には教師と教え子の禁じられた恋愛関係がっ…!!っていうことになってくるのか。あるいは、学術研究に打ち込むあまり女性関係に恵まれずにきてしまった藤崎に、単位が欲しいだけの女子生徒、綾香が関係を持ちかけて…みたいな、現実世界でもありそうだけどやっぱりないっていうストーリーが展開されるのか。
いずれにしても、登場人物はだいたい理解できた。内容をこれ以上理解しようとしても無理なので、当初の予定通りに淫語探しに移ることにする。藤崎と綾香の濃厚な濡れ場にさえたどり着ければしめたものである。
…と、以上のように進めてきて、この次もトントンといけばよかったのですが。
この極めて横着な試みは結局のところ、まったくの失敗に終わってしまった。
あきらかにそれとわかるような淫語が、一切出てこなかったのである。
日本語の官能小説は読んだことはないけれど、その類の小説に出てくる性描写は普通の小説のそれをより下品に、そして大袈裟にしたものを想像して間違いないと思う。だからきっと回りくどい比喩や隠喩が多いにちがいないが、それは日本語表現の一つの特色であるからだということもたぶん間違いなく、中国語で描かれたエロ小説はきっとそれよりはシンプルな表現になるのではないか。だって文字が漢字だけだから。
つまりぼくは、モロに「陰茎」とか「女陰」とかが文中に頻出するにちがいないと思っていたのだ。
しかし「我吻茶香」にはその類のわかりやすい単語はまったく出てこなかった!
一目でわかるエロエロな語句を探して、一心不乱にページをめくり続けていたのに…!
少ないどころか、ひとっつも出てきやしない!!!
唯一、お色気を感じた語句がこれである。綾香脱下繋複的和服。綾香は、よくわからんが服を、とにかく脱いだ、と。その数行後に
誘惑 とある。うーん、ちょと微妙だが、この後にお楽しみが待っているのだろうか…。
しかし、そんな淡い期待は見事に裏切られることとなった。次のページでその章は終わっていたし、エロい言葉も出てこなかった。
全編を通して、ぼくが探していたような単語は一切登場しなかった。
これなんか惜しい。「勃」の文字にちょっとハッとしたけど、「起」がなかった。
これなんか、「書」じゃなくて「所」だったらなァ…。
●●●
このように、ぼくのワクワクドキドキは完璧に裏切られたのであった。
理由はいくつか考えられるが、やはり最も可能性が高いのは、
「そもそもこれはエロ小説ではなかった」
というものだろう。ぼくにこれをくれた友人が、表紙のいかがわしさ等から勘違いしてしまったのではないか。
確かに表紙絵の雰囲気はいかがわしい。作者名の桃喜ってのもあやしい。ピンクな感じがする。
背表紙にある「珍愛小説」という文句の「珍愛」というのも、なんかエロっぽい。これらを見て、Nさんはこの本をエロ小説だと判断して、いわゆる「ジャケ買い」をしてしまったのではないのだろうか。
もしぼくの推測が当たっていて、これがエロ本ではない普通の恋愛小説だったとしても。お土産を貰えてうれしいことには変わりないし、わからない中国語の小説をなんとか読みとくという貴重な経験をすることができてハッピーである。今日のぼくは非常にインターナショナルな人間であったといえる。部屋に引きこもりながらにして、国際理解を深めることができました!!
やってたことは淫語さがしだけど。
ちなみにこの「我吻茶香」最終章の最後の一文は、鳥が巣に帰ってくるように、愛も京都の地に還ってくるというものであるようです。ハッピーエンドで、よかったね。
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