ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。
東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています

第20回 いまどきのTOKYO荒川


書店でなんとなく「都内散策ほにゃららMAP」的な雑誌を読んでいたら、あるページがふと目に留まった。

そのページでは、都電荒川線沿線の観光スポットが数多く取り上げられていた。そしてその中にぼくの興味を惹きつけたものが一つあった。「荒川自然公園」であった。
荒川。
荒川といえば先ず思い浮かぶのは、ドラマ「3年B組金八先生」のオープニングのシーンだろう。海援隊の音楽。荒川の川辺を走っている3-Bの生徒たちと金八先生。擦れ違う外国人女性ランナーと笑顔を交わす。そして生徒たちは原っぱで金八先生を胴上げ。シリーズを通して見たことがないぼくでも容易にイメージできる、有名すぎるシークエンスである。

実際に歩いてみたらどんな感じなんだろうか?いや、いたって普通の川に決まってるんだけど。でも「これがあの金八の…」と思うと、何か違った感覚を受けるのかもしれない。そして「荒川自然公園」。ぼくは限りなくインドア派なので、たまには外出して自然に触れておいた方がいいような気がする。名前からして荒川の近くにちがいないし、ここで自然を満喫しつつ、荒川にも寄ってドラマの登場人物のように風切って走っちゃったりしてみようかしら。

ぼくは見た目も中身もドラマの登場人物とは程遠い、という残念な事実はあえて無視することにする。ぼくなんて「公募のエキストラに参加してオンエアを楽しみに待ち、さて放送を見てみたら一切写っていなかった人」くらいのものだが、そんなことを気にしていたら始まらないのだ。

そういうわけで今回は都電荒川線に揺られて荒川二丁目に向かったのだった。
都電荒川線って路面電車で、ひょっとすると生まれて初めての路面電車にぼくは若干興奮してしまった。一般道とはきちんと隔てられている区画もあったが、簡素な線路が道路に敷いてあるだけのまさに路面電車!な区間は、ぼくぐらいの世代にとってはむしろ新鮮に見える。

とまあ、そんな楽しみはあったのだけれど。この都電荒川線、路面電車ということはつまり古い路線であり、古い町を走っているので利用者にはお年寄りがとても多い。心の狭いぼくでもそんな車内ではさすがに座っていられない。おじいさんおばあさんに席を譲り延々と立ち続ける羽目になってしまった。160円でどこまででも乗れるのはいいんだけどなあ。


さて荒川自然公園です。案内板をチラっと見て、その狭さにがっかりする。ざっと見て小学校の敷地くらいの面積だろうか?雑誌にのるくらいの公園だから、しかも「自然公園」をうたう公園なのだから、さぞかしリッパで広大なものを想像していたのに。井の頭公園レベルの公園を。


自転車置き場にいた猫です。じっと座り込んでいて、上空には二~三羽のカラスが飛んでいた。もしや猫は死にかけで、カラスは猫を食おうとしているのか!!…とゾッとした。
だけど、カラスを目で追っている間にいつのまにか猫はどこかに行ってしまっていた。安堵したものの、カラスが飛び交う公園って怖い。


入ってすぐのところには遊具。自然公園っていうかただの公園じゃねえか!
…でもジャングルジムって久しぶりに見る。


なんとなく登ってみた。うおお!小学校以来のジャングルジムだぜ!!


これもおなじみ、前後に動くアヒルさんです。あのころ何がおもしろかったのか今思えば全然わからないけど。


セルフタイマーでポーズをキめてみた。ぼくは一人で何をやっているのだろう。


遊具スペースの隣には、交通をテーマにした遊園があった。実家の近所の児童公園を思い出す。子供たちが一般道を模した通路で、レンタルの自転車やカートに乗っている。標識で交通ルールをおべんきょうしてみよう、というコンセプトだろうか。


乗り物はここで借りるみたいだ。自転車や一輪車、三輪車にゴーカート(動力付きのと足コギのと)が揃っている。


一つ奇妙なのは、三輪車のところにだけ「大人は絶対乗らないで下さい」とあるということだ。他は大人が乗ってもいいのだろうか。一輪車や足コギゴーカートがよくて三輪車が駄目な理由はなんなのだろう。
ここで路面電車につづく初体験、一輪車に挑戦してみようかとも一瞬思った。だがそこで、交通遊園にお弁当を食べている高校生カップルがいたことを思い出し。思いとどまる。
順当にコケたとしても、万一うまく乗れたとしても恥ずかしい。かたや、彼女と公園でお弁当。かたや、児童向け交通遊園で一輪車(二十歳)。これは、キツい。

遊具スペースと交通遊園以外は、荒川自然公園には見るべきものがなかった。テニスコートや高齢者向けの運動器具はあったけど、どちらもぼくには関係ない。荒川自然公園にはそろそろ見切りをつけ、次なる目的地の荒川へ。公園の案内図の隅には川が描いてある。これこそが荒川にちがいない。

そう思いこんでしまったのが間違いだったと後々思い知るのだが…。

案内図に描いてあった川の方向へ適当に歩いていく。電信柱を見ると、町屋という地名のところへ差し掛かっているみたいだ。ただの住宅地という意外に語るべきことはなく、道がやたらに入り組んでいる。けれど工場が目立つので、ここが川べりであるということはわかる。

本当に道が込み入っていて、とにかく川っぽい方へと進んでいても一向にたどり着けない。行きどまり→引き返す、の繰り返しである。すぐそこに荒川が流れていることはわかっているのに!風に耳を澄ませば、川面の囁きさえ聞こえてくるというのに!本当はそんなの聞こえないけど。

だんだん疲れてきたが懸命に歩き続けていると、ようやく見えてまいりました。


橋!!ついに川にたどり着いたというわけだ。もうそこには、金八先生オープニングで見たあの風景があるのだ。さわやかな日ざし。草原のきれいな緑色、きらきら光る水面。気さくな女性ランナー。走るみんなの笑顔。宙に舞う武田鉄矢…!
だが待ち受けていたのは、予想だにしなかった景色だった。


草、無いよ。コンクリートで固められた岸辺。金八オープニングのあたたかい風景などみじんも無い。こんなとこ走りたくない。なんか危なそうだし。
おっかしいなあ。こんなはずじゃないのに。金八に出てくるのは荒川のほんとうにごく一部で他の大部分は殺風景なコンクリート固め、とでも言うのか。そんなの嘘だ!信じたくない!!でもそう考えなければ辻褄があわない。

困惑しながらも、とりあえず橋を渡りきってみることにした。すると、またもや思いもよらぬモノが現れたのだった。


すみだ川。
荒川だと思っていた川が、実は隅田川だったっ…!
なるほど、イメージと大きく異なる風景にも納得した。けど、荒川自然公園から一番近い川が隅田川だなんて。
なんで「隅田川自然公園」じゃないんだろう?
本当にわからない。わからないが、考えても答えは出ないことはわかる。いろいろと予想を裏切る出来事の連続にすっかり疲れてしまったので、町屋までだらだら歩き千代田線で帰路についたのでした。

●補足●

「荒川自然公園は狭い」と書いたけれど、「荒川自然公園にいちばん近い川は隅田川」ということをGoogleマップで確認していたら、じつはぼくが見ていたのは公園全体の3分の1ほどであったことがわかりました。我ながら視野の狭さにビックリしたひととき。