ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。
東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています

第18回 いまどきのTOKYO麻布十番


今年もまた春がやってきた。4月の東京は雨ばかり降っている。
ぼくは大学2年生になったわけだが、相変わらず毎日を無為に過ごしている。大学のサークルはこの時期は新入生勧誘に熱心なのだろうが、ぼくはサークルなんか入ってないのでそんなものとはまったく関わりがない。キャンパスに人が多いのがうっとうしい、ただそれだけの季節である。朝から昼にかけて通学し、完全にうわの空の講義が終わると速攻で帰宅する。それだけの毎日。休日は家に閉じこもっている。

このようにぼくはつくづく、大学の勉強も課外活動も(ついでに対人コミュニケーションも)何一つとしてまともにこなしていない、もうダメっダメな学生である。ただただ虚ろに毎日を過ごし、それを自覚しつつもどうしたらいいのか全然わからない、という。

そんなぼくが、ふらふらと引き寄せられるように麻布十番に向かい、六本木ヒルズふもと辺りまで続く高級住宅街に迷いこんだのは、なんという運命のイタズラだろう。若者の街どころか、このごろは週4で通う大学でさえ被害妄想的な疎外感に襲われるぼくだが。今回は被害妄想どころの話でなく、本当に「住む世界が違う」と肌でピリピリと感じたのだった。


土曜日の学校帰り、何の脈絡もなく麻布十番に行ってみようと思い立ったぼくは、初めて南北線に乗り込み麻布十番駅で降りた。のだけれど。南北線のホームってかっこいいなあ、転落防止のためのリッパな柵がこしらえてある。ホームドアというそうな。

東京の鉄道、これだけ路線が多いと毎日いろんなところで「線路に乗客が立ち入った」だとか、ひどいのだと「人身事故」だとか、しばらく電車をストップさせてしまうような事故が起こる。鉄道会社だってそのような事故は、こんなたいそうな柵を設置してでも防ぎたいのだろう。利用者としても、朝電車が止まるのは困るしすげぇイラつくのでこういった防止措置はありがたい。ぼくが普段使っている路線でもやってほしい。

しかしまあ、ホームの端から端までギッチリと塞がれている。思い詰めて自殺なんか図ってる人もこんなのがあったら諦めるよなァ。上に隙間はあるにはあるが、これをよじ登るような根性のあるやつは自殺なんてせずに生きていけるだろうし。

さて地上に出ると、もうそこは麻布十番商店街であった。
「古きと新しきが同居している街」ということは聞いていたが、なるほどほんとうにそんな感じの街だ。



上みたいないかにも老舗の呉服屋があるかと思いきや、下の今風なお店(きれいなグリーンが印象的だ)はなんと和菓子屋だ。



こんなファミコン時代からありそうなTVゲーム屋、さらにはやたらに歴史を感じる写真館、写真は撮ってないがごくごく普通の青果店もある一方で


いまどきのおしゃれなカフェ、居酒屋など。
(なお、ぼくの「おしゃれな店」の基準は「和民よりおしゃれであること」なので、ぼくがおしゃれだと思うお店が一般的にみてどの程度おしゃれなのかは定かではない。)


だが古いにしても新しいにしても、品はやたらにいいのだ。明らかに老舗っていう店の多さが下町っぽくもあるのだが、汚さが感じられない。なんか品があるんだよなあ。道路の舗装の感じも、植木も綺麗だ。
ちなみにこの写真の右側の建物、麻布十番温泉といって山手線内で唯一の自然温泉らしい。

ちょうど六本木ヒルズが見えてきたのでそちらに向かって歩いてみることにした。この辺りは坂がやたらめったら多いのが特徴なので普段運動不足なぼくには若干しんどい。


坂にはこのように、わざわざ名前を記した立て札がある。いちいち土地の歴史を感じさせるが、麻布十番商店街を出てここらを歩いていると、周りの家々がそうとうな高級住宅であることに気付かされる。坂道ですれ違う車も高級車が圧倒的に多い。
麻布十番の下町っぽさの陰に見え隠れする品の良さから勘付くべきだったのだが、どうやら港区麻布ってすごい高級住宅街のようだ。歩いていて何度も警官のパトロールに出会ったことからも、ここの住民がたいそうなお金持ちであることが伺い知れる。


この高級マンションなど、入り込んだとき思わず息をのんだ。綺麗すぎる。高台の、綺麗に舗装された下り坂の並木道。「どう考えても自分は場違い感」に鳥肌が立ちそうだった。坂を下っていくと、


共有スペースにさも当然のように置いてあるバスケットゴール。この他にも何個か置いてあり、そのうちの一つでは中学生くらいの男の子二人組みが1on1をやっていた。片方は外人。土曜の午後に外人と1on1。住む世界が違いすぎる。
このマンションでは他にも、外人の家族が芝生でくつろいでいるのを目にした。海外ホームドラマのワンシーンのような光景。同じ日本の同じ東京なのに、まるで別世界だ。


そして六本木ヒルズ近くにたどり着くと、Googleカラーの遊具が鮮やかな公園で子どもたちが楽しそうに遊んでいた。
こんなちっちゃいころから、都心の一等地の公園を遊び場にして育っているなんて!地方出身者としてはコンプレックスの炎がメラメラと燃える。ぼくはこの子達ぐらいのころ、地方都市の片隅のきたねえ公園でずっこけてひざをすりむいていたというのに。背後に六本木ヒルズがそびえ立つ公園で育ったヤツには、何で勝負しても勝てる気がしない。


自分とは一生縁のない高級住宅地で富裕層の生活を垣間見てしまい、この先の人生が憂鬱になってきたところで帰路につくことに。麻布十番に戻ってきた。


高台の高級住宅街はどうも好きになれないが、麻布十番は古きと新しきが心地よく混ざり、下町っぽい空気が優しくてちょっと好きかも。老舗のたいやき屋で一つ買っていこうと思ったのだが、なんと2時間待ちだというのであきらめて帰る。2時間待たされるたいやきって、いったいどんな味がするんだろうか。