ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。
東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています

第15回 いまどきのTOKYO花やしき


何年生だったかは忘れたが、小学生のころ家族で東京旅行にきたとき、花やしきに行ったことがある。

花やしきとは、浅草の浅草寺付近に位置する遊園地のことである。なんといってもその狭さが特徴で、敷地はなんと小学校の校庭ほどの広さしかないのだ。その中に乗り物等がギチギチに詰め込まれているのだが、その多くがお金の掛かってなさが一目瞭然の非常にショボいもので、大手の遊園地とは比べるべくもないまっことチープな遊園地なのだ。

なにせ小学生だったので、詳しくは覚えていないのだが。わざわざ東京に来たんだからディズニーランドに行きたいのが子供心だっただろうに、その辺にある遊園地よりずっとショボい花やしきに行かなきゃならないとなると、あまり気乗りはしなかったのだろうと思われる。

ぼくは今年で21歳になるが、この年になってくるともう遊園地に行ってもそれほどウキウキしなくなってしまった。ディズニーランドでさえ、それほど楽しめないと思う。もうキャラクターの縫いぐるみに出会ってもうれしくも何ともないわけだし。いかに演出がすぐれていようと、3分で終わるアトラクションに60分も並ぶなんてアホらしい。

けれど、そんな今だから。リッチな演出で完璧な夢の世界を創るディズニーランドすら楽しめなくなってしまった今だからこそ、あのころチープさばかりに目がいって掴むことのできなかった、花やしきの本質に出会えるのではないだろうか?

というわけで十年近い時を経てふたたび、花やしきに行ってみることにしたのでありました。

雷門を抜けて、浅草寺で線香の煙を頭にかけ、頭がもうちょっとはマシになることを祈る。そしていよいよ、花やしきが見えてきた。


おお!そこに見えるや、実に立派なスペースショットではないか。昔はこんなんあったっけか?普通にお金がかかっていそうで、花やしきには似つかわしくない。

少子化などの影響で遊園地やテーマパークの経営は厳しくなる一方という状況の中、こんな設備投資をする体力が花やしきにあったなんて驚きである。前はガラガラだったような覚えがあるのだけど、大丈夫なのか!?

でも、入場口に着くと「らしい」キャラクター達が出迎えてくれました。


この「何なのかよくわからないキャラクター」こそ、零細遊園地にふさわしい。左はたぶん妖精なんだろうが、ちっともかわいくないところがいい。顔でかすぎ。右のクマさんは、わざわざ名前が書いてあるのがおかしい。ところどころ塗装がハゲたこんなクマの名前なんて、全世界でもっともどうでもいい情報の一つだと思う。

花やしきに入ったものの、特に目当ての乗り物はなかったので、どことはなしに狭い園内を回ってみることに。隅っこにちょっとしたパフォーマンスステージみたいなものがあり、タイミング良くショーが始まるところでした。


フラワーレンジャーショーというらしい。こんな格好で外を歩いていたら職質の対象だろうけれど、花やしきの中では彼らはヒーローなのだ。学生のバイトだが職員だか知らないが、コスチュームを着れば花やしきの魔法が、彼らをフラワーレンジャーに変える。

青レンジャーの彼はカメラを向けるぼくに気づいて、じつにいい顔でポーズをとってくれた。パワーみなぎる腕、真っ直ぐで力強い目線、まさにヒーローである。当サイトでは写真を載せるときに、プライバシー保護のため人物の顔を隠しているのだが。こんなに男前な顔を隠してしまうのはもったいないのでそのまま載せることにする。彼のパフォーマーとしての心意気に、ぼくも応えねばならないのだ。

ショーの方は、役者の滑舌が悪く聞き取りにくかったのですぐに立ち去りました。

入園時にもらったパンフレットを見ていて、一つ気になるアトラクションがあった。このパンフ、花やしきの施設に対して「古い」「狭い」「ボロい」と思い切った紹介の仕方をしている。もちろん、それが花やしきの良さなのだという文脈でだけど。その中で一つだけ、「最新の3D音響システムで視覚と聴覚を両攻め!」などと、最先端をアピールしているものがあったのだ。


それがこちらの「ゴーストの館」である。ごらんの通り列ができているところからも、最先端の匂いがする。アトラクションを終えて出てきた小学校高学年くらいの女の子が「死ぬかと思った」と漏らすのを耳にした。そんな怖いのか、これ。嫌が応にも期待は高まる。


ちなみに飾ってあったこの西洋の鎧、股間がまったくノーガードです。よりによってそこだけ無防備とは、どういうことだろう。
肝心のゴーストの館はというと、暗い部屋で椅子に腰かけ、ヘッドホンをつけて音声を聴くというだけのものでした。サラウンドヘッドホンからたしかに立体的な音響でお化けの声が聞こえたものの、怖くもなんともなかった。さきほどの小学生はこんなのによく死の危険を感じられたものだ。大人になるとわからなくなることも多いのかな。


ゴーストの館があった建物の屋上にあがると、園内を上から見渡すことができた。ミラクルストーンとかいう迷路アトラクションの仕組みも、バッチリ見えてしまう。「がんばった高校生の文化祭レベル」でいいと思う。

小学生のころ、ここのローラーコースターに乗ったおぼえがかすかにある。パンフによるとこのコースター、最高速度は42km/hで、現存する日本最古のコースターだそうな。「いまにも壊れそうな感じがたまらない!」だとか。こんなこと宣伝文句にしちゃっていいのだろうか。ホントに壊れたらどうするつもりだろう。


行ってみるとなんと、ローラーコースターには長蛇の列ができていた。そう、この日の花やしきは意外にも混雑していたのだった。とくにローラーコースターは人気のようで、結局40分近くも待たされてしまった。これに限ってはディズニーランドにも引けをとらない。


ちょっと発見だったのは、撮影のためカメラを抱えながらジェットコースターに乗るとなぜか、怖さが増すということだ。まあ、デジカメを構えながら乗っても大丈夫なほどぬるいジェットコースターなんてここくらいのものだろうけど。前に座っていた小学生男子の頭が、丸くてかわいい。これを見られただけで40分の甲斐はあった!と自分に言い聞かせる。

冒頭で、「昔はチープさに隠れて見えなかった花やしきの本質が今だからこそ見えるのかもしれない」と書いたが、どこを見ても残念ながら、チープさしか印象に残りませんでした。
だけど、浅草の仲見世や古めかしい街並み、演芸場の雰囲気を考えると、このチープさこそが花やしきの本質であるような気もしてくる。花やしきは安っぽく、狭く、古くなくちゃ花やしきじゃあないのだ、きっと。

これまた小学生のころ乗った覚えのあるBeeタワーで、花やしき探訪を締めることに。



浅草寺からうんこビルまで、浅草を一望できる、なかなかにすばらしい眺めでした。