ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。
東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています

第9回 いまどきのTOKYO池袋西口 


諸処あって、ほぼ毎日池袋に通う機会があった。

池袋もまた、ぼくにとっては余り馴染みがない街であった。そもそもぼくは自宅に籠もり気味なので足繁く通う馴染みの街なんて存在しない、ということはさておき。
アパートの一室を中心とした半径800メートルほどに限定される、ぼくの狭すぎる行動範囲。そこから飛び出して池袋まで行くというのは、春休みの引きこもり生活をエンジョイするぼくにとってはちょっとした冒険だった。しかもほとんど毎日である。毎日がアドベンチャーだといえる。
そんな冒険で出会った池袋の街の姿を、折角だからこの連載に書き残しておこう。なお、今回は東口方面はスルーし西口のみを扱うことにする。サンシャインや乱立するビックカメラ等についてはまたの機会に。


西口を出たところに、こんな銅像があった。裸体の女性が二人、男性が一人という組み合わせである。
銅像ってやたら裸体が多いと思うのだが、これはどうしてなのだろう。ぼくは芸術とかアートっぽいものについての理解が乏しいのだが、服を着た銅像よりも裸体の銅像をつくりたくなるのは裸体の方がより作家にインスピレーションをもたらすからなのであろうか。衣服の質感なんてどうせ銅像じゃ出せないから、より表現しやすい肉体の美しさに走る、ということか。

この銅像(群)、女性は見ての通り全裸である。首に巻かれた懐中時計はきっと「時」という概念を表しているのだろう。それ以外には思いつかない。作品のテーマは「時間と人間存在について」といったところか。
そしてようく見ると、女性が全裸であるにもかかわらず、男性はブリーフかふんどしのような下着を身につけている。肉体の表情がもっとも重要な裸体の銅像において、わざわざ肉体の表情を隠すようなふんどしを纏っているということは(そんな部分の「肉体の表情」が克明に表現されているのも嫌だが)、そこにも何らかの意味が込められていると考えるべきだ。さしずめ作品テーマは「時間と人間存在とふんどしを締めた男子」と言って相違あるまい。

「時間と人間存在とふんどしを締めた男子」の像を通り過ぎてちょっと歩くと、池袋西口公園に辿り着いた。


未見なのだが、「池袋ウエストゲートパーク」というドラマの舞台になったらしい。しかし公園内の案内板によると、西口公園は英語で’’Ikebukuro west exit park’’と書くんだとか。池袋ウエストエクジットパーク。なんとなく、タイトルでは表記を変えたくなった作家さんの気持ちもわかる。エクジット。エクズィット。
写真の奥にある、これまた「アートっぽい」デザインの建物は東京芸術劇場。写真中央にあるオブジェ、なんとなく中学校の美術資料集で見たことがある。

人気ドラマの舞台にもなった西口公園だが、何か変わったものがあるのかというと、これがまた特に見あたらないのである。普通のロータリーに、やたらに銅像や記念碑が設置されているだけだ。中核に東京芸術劇場を置いているから西口公園にもなんとなくアートの風を吹かせよう、という意図が透けて見える。


そんな醒めた目で西口公園の銅像たちを眺めていると、なぜか突然の便意がぼくを襲った。西口公園の汚いトイレで用を足すのはとてもじゃないが嫌だ!ということで、差し迫ってきたお腹を抱えながらキレイなトイレを求めて漂着した喫茶店がこちらです。


ぼくはお洒落なカフェ等とは無縁の生活を送っているが(スタバで精いっぱいだ)、そんなぼくから見ればここはなかなかお洒落な喫茶店に分類される。プレーンな白のカップとポット、砂時計が可愛らしい。壁には洋書の写真集や絵本などが掛けてある。オズの魔法使いとか。
こんなこじゃれたカフェに行く機会はぼくには滅多にないが、その滅多にない機会とは今回、うんこだったわけだ。なんかこの先の機会もどうせ、うんことかそんなんだろうなという予感がある。あ、トイレは予想通りキレイでした。

スッキリしたところで、東京芸術劇場に入ってみる。


ここには大中小の三つのホールがあり、5Fの大ホールに続く長ーいエスカレーターが印象的だ。そしてエレベータのふもとには、またも銅像。


作品タイトルは「おっとっと」。作者名や題が特に記されていなかったのでぼくが勝手につけた。これ以上ふさわしいタイトルは他に無いだろう。誰もがこの銅像を目にしたとき、「おっとっと、って感じだなァ…」と思うのではなかろうか。例えば「破壊と再生の堕天使(リュシフェル)」みたいなタイトルがこの作品につくはずが無い。絶対に「おっとっと」だ。

エレベーターのてっぺんあたりから撮った写真です。


「全ての道は羅馬(ローマ)に続く」という諺が、この風景を見たときに頭に浮かんだ。エレベータは「おっとっと」に続く。昇降時の段差に注意しろ!というメッセージなんでしょうかね。

東京芸術劇場のオイシイところはもう全て満喫してしまったような気がしてきたので、さっさと外に出ることに。
その辺をうろうろしていて出会った、新装開店のうどん屋です。


王様のうどん。いや、店自体はこれといってどうってことないんですが。食べてもいないくせにどうってことないとか言うのも失礼か。だがこの開店祝いのお花の差出人をようく見ると、「麺 えるびす」というラーメン屋の名前がある。


こちらのラーメン屋である。このえるびすは、王様のうどんの道路を挟んでちょうど向かい側に位置する。普通に考えて両店の関係は、商売敵だ。ラーメンとうどんというジャンルの違いはあっても、間違いなく客を奪い合い火花を散らす敵同士のはずだ。なのにえるびすはうどんの王様に開店祝いの花を贈っている。これは戦線布告だろうか。それとも、「敵に塩を送る」というえるびすの武士さながらの心意気なのか。

両店の間に武田信玄と上杉謙信のイメージがだぶってきたところで、今回は終わりです。