ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。
東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています

第8回 いまどきのTOKYO珍ビル


上野にある高級ホテル「ソフィテル東京」の取り壊しが決定した。
これだけでピンと来る方はなかなかいらっしゃらないと思う。少なくともぼくは全然ピンと来なかった。
しかしこのニュースの詳細を読んでみれば、ソフィテル東京とは上野公園の不忍池そばにそびえるあのビルのことだったのだ。そう、ひとたび目にしたら誰もが忘れられなくなるであろう形状の、あのビル。
これがそのソフィテル東京である。


このブッ飛んだ、他に類を見ないフォルム。等脚台形の左右の辺を階段状にギザギザにしたものをタテに五個配置し五重塔風に構成している。タテの接合部分に大きな隙間をつくっているが、見るからに強度を犠牲にしていそうな造りである。大地震が起こればポッキリいきそうな柱が頼りなさすぎる。
そこに空間があった方が台形の区切りがはっきりして一つの屋根のように見え、より五重塔のイメージを見る者に喚起させるのは確かだ。だがこんなに脆そうな構造にしてまで、そんな意味のわからない方向のデザイン性を追求したのはなぜだろう。ビルをこんな形にして何になる。周囲の建物や、不忍池の景観からの浮きっぷりもすさまじい。建築デザイナーは何を考えていたのだ。

そんなことを初めて上野公園を訪れ不忍池のほとりを歩き、嫌が応にも目に飛び込んでくるこのビルを見て思った。しかしそのときは変な建物だと思いながらも、これは古いマンションか何かだと勝手に決め込んでいた。それならデザインのおかしさもなんとなく納得できるような気がしていた。だが冒頭のニュースを目にして本当はホテルでしかも高級ホテルなのだと知り、ただ驚くばかりであった。昨年末に営業が終了し、取り壊しが決定したというのにも二重に驚いた。
だが落ち着いて考えると、営業終了も取り壊しも当然の成り行きといえるのかもしれない。見た目高級感はまったくないし、利用する側としてはこんな形のホテルは信頼できないだろう。ソフィテルはフランスの最高級ホテルチェーンであるようだが、そんな立派なホテルがこんな妙ちくりんなデザインのホテルを建てたのか本当にわからない。こんな珍ビルを。

今回はこのソフィテル東京に関連して、ぼくが知る範囲で東京の「珍ビル」を紹介しよう。
珍ビルといえば、まず思い浮かぶのは浅草のアサヒビール本社ビルである。

 

通称うんこビル。このオブジェを見てしまったら、そう呼ばざるを得ないだろう。実際ぼくが取材に出向いた時も、このビルを眺める人々は口々に「うんこうんこ」と言っていた。どう見てもうんこなのだから当然の反応である。
これもまたソフィテル東京同様、建築した人物の気持ちがわからない。建築のデザインがどんなプロセスで行われるのかはまったく知らないがしかし、デザイナーがこのオブジェのカタチを練っている最中に「これ、うんこだよなあ…」と思わなかったとはどうしても思えない。誰がどこからどう見てもこれは、うんこだ。
したがって、うんこに見えるとわかっていてあえてこんな形のものを造ったと考えて良いだろう。ぼくなりにその意図を考察してみよう。左のビルの窓ガラスには金色が使われ、その上部は泡を模した形をしていて銀色に塗られている。これは見ての通りグラスに注いだビールをイメージしたデザインだ。ならば、その右の金色のうんこは「ビールを飲んだあとのうんこ」ということだろう。そう考えれば合点がいく。

 

こんな色のが出たら、マジでやばいんじゃなかろうか。
だがこの「キレの良さ」には唸らされるばかりだ。

珍ビルとは関係ないが、浅草で見かけた看板。

 

別に気になりません。

ただ単にぼくが珍ビル事情に疎いだけなのかもしれないが、思ったより珍ビルと呼ぶに足るビルは少ない。妙なヤツがもっとあっていいんじゃないだろうか、無表情で均一なビル群には飽き飽きしている。そりゃ、街中のビルがこれまで挙げた二つのような珍ビルの中の珍ビルばかりになったら嫌だけどさ。
高田馬場を通りがかったときにちょっと印象的だったBIGBOXも、いざ写真に撮ってみたら

 

こんな感じでいまいち珍ビルっぽさに欠ける。箱形の窓のまったくないでっかい建物がヌメっと建っているのが独特の存在感を生んでいるのも確かである。しかし何かが足りない。
せめて完全な立方体だったらなあ。それかモノリス。あるいは、走る裸の男の絵が陰部まで描きこんであったりだとか。

やはり、ソフィテル東京やうんこビル並みの大物に登場していただかないと今回の連載を締められない。というわけで、ソフィテル東京をデザインされた菊竹清訓先生の作品をもう一つ訪れてみた。

 

江戸東京博物館。これまた先生が何をイメージして設計なされたのかがよくわからないが、なんだかガンダムに出てくる戦艦みたいである。トリコロールカラーに塗り替えたらいいのに。そんなことしたら、江戸東京博物館というかガンダム博物館ですか。

 

この無駄なデカさも菊竹先生ならでは、なのだろうか。そういやソフィテル東京もうんこビルも、ビルとしてはかなり大きい部類に入る。珍妙な形のものが無駄なスケールで造られると珍ビルができてしまうということかな。

ちょっと今回は数を紹介できなかったので、また発見次第ここで珍ビル紹介をしたいと思う。