ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。
東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています

第3回 いまどきのTOKYO帰省


この連載はいまどきの東京をオレなりの目線で紹介するってことでやっているんだが、それ目当てで読んでくれている方には申し訳ないが、オレは年末年始は帰省していて東京にいなかったんだ。

おっと、帰省ってのは「実家に帰る」ってことさ。東京でハード・デイズ・ナイトな生活を送っているオレだって、たまには骨休めでもしたい。というわけで、大晦日とお正月くらいはちょいと故郷に帰ってみたくなったってワケ。まあそういうところは、オレも人の子ってことだよね。もちろんお年玉だって貰った。

ということで今回は東京から離れて、名古屋に帰省したときのことでも書くよ。念を押すようだが、帰省っていうのは「実家に帰る」ってことだ。



小さくて恥ずかしいんだけど、これがオレの実家。

わりと古風な外観だけど、オレはそこが気に入っているんだ。だけど、重要文化財とかになっていそうな建物に見えるが建築自体は戦後のもので、中身にはハイテクが詰まっているんだ。伝統文化と最新技術のコラボレーションっていうかさ。エレベーターがあることが自慢かな。

ちなみに緑色の屋根の母屋の左隣にあるちっこい建物は、トイレ。小さいといってもトイレとしてはそれなりの大きさだから、オレの自慢のトイレなんだ。
欠点は母屋から少し遠いこと。ガキの頃なんか、よく途中で漏らしたもんだね。



当然ああいう建物だから、堀みたいなものもあってさ。

そこで飼ってるシカの写真を載せておくよ。名前は「くぅーちゃん」。オレが幼稚園くらいのときは毎日オレを背なにおぶっちゃあ、お堀を駆け回っていたものさ。
ちなみに怒ると、ツノでオレの尻を刺すんだよね。その度に血便が出ました。



じつはオレは動物好きで、水を入れているお堀の方でもペットを飼っている。

アヒルのクリントン君。元米大統領と同じ名前だがこっちの方が先だ。クリントン君の背中にはいくらオレでも乗らなかったね。けど可愛いヤツでさ、エサを投げてやると本当に美味しそうに食べるんだよ。

そしてこれが、うちで飼育係として雇っている加藤さん。本人の希望で顔は隠してある。主にクリントン君の世話を担当しているんだ。加藤さんに言わせれば、エサやりの極意は「サイドスロー」だそうだ。ちなみにクリントン君は、怒るとクチバシで加藤さんの尻を刺すらしい。その都度血便が出るとは、加藤さんのコメント。



実家のことばかり書くのも恥ずかしいから、次は母校でも紹介しようかな。
オレは東京の大学に通っているが、実は幼稚園から高校まではエスカレーター式の学校に通っていたんだ。わりと感じのいい学校で、オレを今のような立派な青年に育ててくれたのはここだったと言ってもいいだろう。
ちなみに校舎はこんな感じ。

ちょっと立派過ぎるって、建設の際は地元住民からの抗議活動とかもあったらしい。少しデカすぎるんじゃないかってのはオレも思ったけどね。幼稚園は1階なんだけど高等部くらいになると40階とかになって、避難訓練のとき大変だったね。延々と続く非常階段。それがめんどくさくて、ここは大学院まであったんだけどオレは高校で辞めて大学は外に行ってしまった。

そういや、写真ではうまく出なかったけどこの日は校舎の上の方がなんか煙っぽかったんだ。院生の奴らが焼きイモでもやってたのかな。



少々歩き疲れたので、帰路につく前に母校のカフェテリアで休憩をとった。

写真はここで一番おいしいオレお勧めのキャラメルフラペチーノなんだけど、これを注文するときになんとも言えない再会っていうか、そんな胸にチクリと刺さる出来事があったんだ。

在学していたころと少しも変わらない賑わいのカフェテリアを横目に、オレはレジの列に並んでいた。いよいよオレが注文する番になってオレは、レジで注文を取っているバイトの女の子がオレの、こういう言葉は少し恥ずかしいのだけど、元カノであることに気がついたんだ。

すぐにヨシ子(仮名)もオレに気付いたようで、二人の間を一瞬のうちに何よりも深い沈黙が支配した。学生の話し声で騒がしいカフェテリアの中で、オレたちだけが別の次元に放り込まれたような感じがしたね。ヨシ子(仮名)はオレに何か言いたいようだけども言葉が見つからない、そんな目をしてオレをじっと見ていたよ。オレの頭の中を、ヨシ子(仮名)との数々の思い出がよぎっていった。二人の馴れ初め。愛し合った日々。6股がバレて殺されそうになったこと。ここの大学に進むヨシ子(仮名)に、東京に出るからと別れ話を切り出したオレ。「別れないで」と泣いて懇願するヨシ子(仮名)…。

このどうしようもない沈黙を断ち切って、オレはヨシ子(仮名)にこう言ったんだ。



「キャラメルフラペチーノ、ショートで」



この言葉は、オレたち二人の間では特別な意味を持っている。もちろんヨシ子(仮名)もそれを覚えている。その意味するところはここにはちょっと書けないが、オレたちの始まりから終わりまでの全てがこの言葉の中にある。ヨシ子(仮名)は全てを了解したような顔をしたあとオレから代金を受け取り、さっさと厨房の奥へ行ってしまった。けどその目には押さえきれずにこみ上げてきた涙が溜まって、今にも溢れ出さんとしているようにオレには見えたね。



最後はちょっと切ない話になっちゃったね。とうの昔に捨てちまってその辺に埋めた筈の過去が、いつの間にか這い出てきていてオレを躓かせる。それが故郷ってことかな。