ライター:としゆき
生まれは高松で育ちは名古屋、という東京には何ら関係ない人生を歩んできたが、最近上京したのでなんとなく「いまどきの東京」でも紹介することにする。
東京にはあまり詳しくないです。
当コラムはいまどきの京都(Travel@nifty)をはげしくリスペクトしています

第1回 いまどきのTOKYOあかり


「いまどきの東京」をぼくなりの視点で紹介するのがこのコラムである。と決めて連載をはじめたものの、そりゃいったいどんな視点なんだようっ、という話だ。上京して一年にも満たないこのぼくが、この無機質なコンクリートジャングル(ぼくが住んでいるのは実家の周りより田舎っぽい住宅地だが)のいまを語るために、いったいどこに着目したものだろう。

 そんなことを考えながら夕まぐれの街を歩いていると、陽も沈みかけた寒空の下で街を照らしはじめた「あかり」に気がついた。
というわけで今回は、そんな「あかり」にスポットライトを当ててみました。初回から、書いてて恥ずかしい洒落である。

 まずは、最も身近なあかりから。



 ぼくの部屋の照明である。写真でお分かりいただけたこととは思うが、輪っかの蛍光灯にかさをつけただけの一般的な照明より、いくぶん高級品を使っている。メタルのかさに覆われた、ぐりぐり動かせる蛍光灯が三つ。別段照明にこだわりはなかったのでなぜこれを選んだかは今となっては不明だが、その見栄えや性能には満足している。渋い銀色がかっこいいし、なにせ蛍光灯が三つもあるのである。一個だけでも通常の蛍光灯より光が強いような気がなんとなくするし、それぞれが独立して動くので簡単に角度を調整でき、部屋中をまんべんなく照らすことができる。

 三つあることはすばらしい。何かが三つあるということはそれだけで強力な機能を意味する、それがぼくの持論である。これはわりと核心をついていると自分でも思う。毛利元就の三本矢の話なんかでもそうだし、たとえばキングギドラなんかを思い浮かべてもわかりやすいだろう。まだピンとこない方は、もし明日の朝目覚めたとき、あなたの男性器が三本になっていたら…と想像してみてほしい。その後のあなたの人生はそれまでとまったく異なるものになるだろう。つまりはそういうことだ。

 なお、この照明にはヒモやリモコンなどが一切ついておらず、着けたり消したりが壁のスイッチでしかできないので地味に不便だということも付け加えておく。


 若干、身近なところからスタートしすぎた気がする。部屋の中にはこれ以上立派なあかりもないし、(トイレの60W電球を紹介するのもなんかナァ)他のあかりを求めて外に出てみることにした。おりしも今はクリスマスシーズン。街はきらびやかな光で包まれていた。



 これは井の頭線渋谷駅のクリスマスツリー。ただ、こういうのってぼくはあまり好きではない。イルミネーションは結構だが、こういう木にムギ球をしこたま巻き付けただけのようなのは見ていて飽きるのだ。特にどうってことのない人生を歩む庶民のみなさん、その道すがらご覧なさい綺麗でしょ?のようなお高くとまった感じがするくせに、やってることは家庭でやるような電飾と同じ発想でただ電球の数と種類を増やしただけ。コンセプトもないくせになぜお前はそんなに偉そうなんだ、と思う。

 

そんな若干のむかつきを覚えていたところで、以前中村勇吾氏(注)のブログで知ったakarium call projectを思い出した。同じイルミネーションでも安易な電飾やクリスマスツリーではない、新しい試みやコンセプトがある「あかり」。akariumはまさにそれなのだ。

 akariumをざっと説明しよう。こちらのページに詳しいが、表参道の通りに数十本、ところてんをおっ立てたような



 こんな柱がならんでいる。夜の街を彩るイルミネーションであるからして当然光るわけだが、その光りかたがとても斬新なのだ。通常はあたたかなクリーム色の光を放っているが、akarium オフィシャルサイトにあるフリーダイヤルに電話をかけて話かけると、その音声をコンピュータが感知して光がさまざまな色に変化し、声にあわせてぼんやりと点滅するのである。しかも、ここがすごいのだが、街中の全てのakariumが一斉に反応する!街を歩く人々が単に眺めて終わりなのではなく、遊べる「あかり」なわけだ。これはぜひやってみなければ、ということで勇んで表参道に向かう。


 到着して目に入ってきた光の柱は、思ったより大きなものだった。イルミネーションとしてはとても斬新な企画なので、電話が繋がりにくくなっていることを危惧していたのだが、意外とすぐにフリーダイヤルにつながった。ピーという発信音のあとにakariumに願いごとを言え、と機械音声。願いごとを叶えてくれる魔力がakariumにそなわっているとは初耳だったが、人でにぎわう表参道の真ん中で願い事を声に出して言うには、ぼくはシャイにできすぎている。そして人に言えない願い事だってある。だがなにか喋らないと、akariumはぼくに応えてはくれない。ぼくの言葉が、光へと変化する瞬間を見ることはできない。

 

 そんな戸惑うぼくの唇から、いつしか自然に出てきた言葉は
「うんこ」
だった。ほかに何も思いつかなかったからだ。もう二十歳なのに、それしか出てこないぼくはいったい何なのだ。

 そして、ぼくの口から発せられた「うんこ」というコトバはakariumに伝わり、



 こんな「あかり」として生まれ変わった。橙色のやさしい光が、冬ざれた表参道の街を彩った。

 

 まあ喋っている言葉の内容までは分析できているはずもなく、声の高さで色を変えているだけだってことはすぐわかったのだけど。「うんこ」も「ウーピー・ゴールドバーグ」も同じ色です。他に喋った言葉もたいがい小学生レベルの下ネタだったわけですが、電話口でそのような言葉を、しかも大声でまくしたてているぼくは道行く人々の目にはそうとうなバカに映ったことでしょう。だけど、彼らが談笑しながら歩いた表参道を一瞬照らした「あかり」はぼくが創ったものだということを、このぼくだけは知っている。その大概がうんことかだったことも。

(注 中村勇吾氏…超有名なウェブデザイナー。彼のお仕事の一部はこのページからいくつか飛べますが、なんかスゴすぎです)